市民活動促進条例−提言を読む 1%の挑戦
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札幌市の上田文雄市長が本年度中の制定を目指す「市民活動促進条例」 を論議してきた検討協議会が、11日に原案となる提言を出した。同条例は 上田市長が公約に掲げる重要条例だ。提言は「資金、場所、人材、情報」 の四分野の支援を打ち出し、民間非営利団体(NPO)や町内会など市民活動 の担い手たちの注目を集めている。
提言の目玉は「1%支援制度」だ。納税者が自分の意思で自らの個人市民 税のうちの1%分を、応援したい市民団体の活動に充てられる仕組み。納税額に変わりはないが、1%分の使い道を市に委ねずに自分で決めるというわけだ。
千葉県市川市が2005年度にスタートさせ、全国的にも関心を呼んでいる。 「税金を託されれば自分たちの活動が認められた、とやる気や自覚が高まる。出す方も市民活動に関心を持ち、地域の課題に気づくきっかけができるはず」。
ボランティア情報誌「月刊ボラナビ」を無料で発行する特定非営利活動法人(NPO法人)の「ボラナビ倶楽部」代表、森田麻美子さんは、同制度の実現を熱望する一人だ。 先行する市川市の制度は、次のような仕組みになっている。
支援を希望する団体が市に活動計画を提案
有識者が審査した上で市が広報誌やホームページなどで全団体を紹介
納税者が支援したいと考えた場合、個人市民税の1%分をどこに支援するか選んで市に通知。希望する団体がなければ「支援基金」に回す
市は集まった額を団体に渡す。支援を望まない納税者は、市に通知しなければよい。
2005年度は福祉や環境系のNPO、ボランティア団体を中心に、自治会や子ども会なども応募し、81団体が支援対象になった。納税者22万人のうち「1%支援」を届け出たのは5,557人で2.5%。納税者全員が1%分を支援に回せば約3億円になったが、約1,342万円にとどまった。2006年度の応募は98団体に増え、26日まで受け付けた出資者も昨年度を上回る見込みだ。制度は少しずつ定着している。
NPOなど市民活動の担い手にとって資金不足は悩みのタネだ。「ボラナビ」の森田さんも現在、情報誌3万部を市内1,000カ所に配布するほか、インターネットなどでユニークな事業を展開し、常にメディアや企業から注目されているが、人件費を抑えざるを得ず、6人いるスタッフは事実上のボランティアだ。取材や配布も61人のボランティア頼み。累積赤字は461万円で、森田さんの持ち出しも多い。「多くの市民活動団体は深刻な資金不足に悩んでいる。1%制度を切望しているはずです」
検討協議会で同制度の導入を訴えた北海学園大の樽見弘紀教授は「公共サービスへのニーズが多様化する一方で、行政は細分化してその要望に応えられず、限界が来ている。だから、行政から市民活動へ活動領域と財源の禅譲が必要なのです」と指摘する。
ただ、検討協議会では、1%制度について「市財政が厳しい中で導入は時期尚早では」といった意見も出され、提言では市川市と同じ方式にするかなど具体的な内容には踏み込まなかった。制度の実現には、まだ解決しなければならない課題もあるという。次回はその課題をさぐる。
(2006年5月30日 北海道新聞朝刊)