日本の婚姻数(婚姻率)と出生数(出生率)の推移についてご紹介します。
2024年2月に政府が公開した人口動態調査を元に2023年の統計を中心にまとめています。
厚生労働省の統計によると、2023年の婚姻数(婚姻率)は戦後で初めて50万人を下回りました。
また、出生数は80万人を下回り、過去最少を更新。
東京都は史上初めて1.0を割り込みました。
婚姻数と出生数に関連する情報も合わせてお伝えします。
2023年の婚姻数は戦後で初めて50万人を下回る
厚生労働省発表の人口動態統計月報年計(概数)によると、2023年(令和5年)年の婚姻件数は47万4717組と戦後で初めて50万人を下回りました。
前年の 50万4930組より3万213組と大幅に減少。
2022年はコロナの関係による行動制限の緩和のためか、婚姻件数は前年より増加しましたが、23年は減少傾向に戻りました。
婚姻率(人口千対)は 3.9 で、前年の 4.1 より、0.2ポイント減少しています。
最近の10年では、減少傾向にあり、2020年がコロナの影響で前年より約7万3000組減少と大幅に減少。
2023年の減少幅は、ここ10年では、2020年に次いで大きいです。
「令和婚」の影響があった2019年(令和元年)と、2022年は前年より増加しています。
婚姻件数の年次推移をみると、1972年の109万9984組をピークに、1975年以降は増加と減少を繰り返しながら推移しています。
ピークに至った要因は、ベビーブーム世代が絡んでいます。
第1次ベビーブーム世代が25歳前後の年齢を迎えた1970年から1974年にかけて年間100万組を超え、婚姻率(人口千人当たりの婚姻件数)もおおむね10.0以上であった。
引用;令和4年版 少子化社会対策白書
2019年の婚姻数の増加についてはこちらの記事をご覧ください。
婚姻数の大幅減少について
ここ最近は減少傾向が続いているとはいえ、2023年は、コロナの関係による行動制限等の影響があまりなくなった中で大幅に減少しています。
シンクタンク・日本総研の2023年1~3月期の婚姻数に関するのレポートでは、「今後の婚姻数の急減が懸念される」としています。
2023年1~3月期の婚姻数(外国人を含む速報値)が、前年同期比▲14.2%の大幅減となった。コロナ第8波の影響があったとはいえ、第6波に見舞われた前年同期と比較して、社会・経済環境が極端に悪かったとはいえない状況下での急減はショッキングである。
コロナ禍で社会の混乱が大きかった20年と21年は、婚姻数が大幅に減少。
令和婚の影響で婚姻数が一時的に増加した19年の前年の18年を基準に考えると、21年までの婚姻数の減少率は年率▲5.1%となり、18年までの▲1.8%に比べ減少のペースは大幅に加速。22年に入ると社会的な混乱も終息の方向となり、婚姻数はいったん下げ止まったものの、23年1~3月期は再び大幅減に。コロナ禍で先送りされていた結婚に踏み切る動きが、早くも22年中に一巡してしまった可能性もあり、今後の婚姻数の急減が懸念される。
引用:日本総研「2023年1~3月期の婚姻数が大幅減」(日本総研WEBサイト・経済・政策レポート))
また、日本総研の2022年のレポート「婚姻数急減の理由」では、2021年までの婚姻数の減少の理由を年代によって分析しています。
それによると、コロナ禍の影響はあるものの、2015年時点で、結婚に対する意識上で、非婚化が広がっているとまとめています。
引用:日本総研「婚姻数急減の理由」2022(日本総研WEBサイト・経済・政策レポート))
- 2010年、15年頃の婚姻数の減少は、主に未婚人口の減少によるもの。
- 2020年は、未婚人口の減少以上に成婚率(=未婚者数に対する婚姻数の比率)低下の影響が顕著。
- 2020年、21年の婚姻数減は、コロナ禍の影響、すなわち、出会いの場の喪失や非正規雇用者の失業等の影響が考えられる。
しかし、アンケート調査によれば、すでに15年の時点で、男女とも一生結婚するつもりのない人の割合に顕著な上昇が認められており(図表4)、非婚の広がりは予見された事態。
そのため、アフターコロナに婚姻数が回復するとの安易な見方は禁物。
たとえ今後回復しても、足元での結婚の先送りは社会全体でみた妊孕力の低下をもたらし、将来の出生数の押し下げに寄与する可能性が高い。
生涯未婚率については、こちらの記事をご覧ください
2023年の出生数は過去最低
次に、婚姻数とも関連性の高い出生数と出生率(合計特殊出生率)を見てみます。
2023年の1年間に生まれたこどもの数は72万7277人で、前年より4万3482人減と大幅に減少し、過去最低になりました。
1人の女性が生涯に産む子供の数を示す「合計特殊出生率」をみると、 2023年(令和5年)は1.2で、これまで過去最低だった2005年をさらに下回り、過去最低となりました。
合計特殊出生率は、2005年以降、微増傾向が続いた後、2015年(1.45)以降は毎年減少しています。
出生数は、2022年、国の推計より11年早まって80万人を割り、減少のペースが速くなっています。
国立社会保障・人口問題研究所が2017年に示した将来推計では、日本人の出生数が2033年には77万人台になとしていましたが、10年も早い2023年で72万人台にまで落ち込みました。
大幅な出生数減少の理由
大幅な出生数減少の原因について、日本総研では、婚姻数の減少は、2~3年後の出生数に影響を与えることが知られており、「コロナ禍で顕在化した婚姻数の減少」があるとしています。
婚姻数の減少は、2~3年後の出生数に影響を与えることが知られており、2020年以降コロナ禍によって婚姻数が急減した影響が、23年の出生数の大幅減少となって顕在化したもの。婚姻する人の割合の低下は、過去一貫して少子化の一因であったものの、2010年以降は出生数減少の主要因ではなくなっていた。
ところが、コロナ禍で雇用の不安定化や人の出会いが極端に抑制されたことをきっかけに、婚姻数の減少が顕著となり、再び少子化の主要因に浮上してきたとみられる。
また、前年比の減少率は2022年は5.1%で、2021年の3.4%減より拡大しました。
2023年の出生数は▲5.8%減、出生率は1.20前後に低下へ(日本総研WEBサイト・経済・政策レポート))
出生率減少の原因として、経済的な理由や十分とはいえない育児対策などもあげられています。
欧米の多くの国はコロナ禍による出生減から既に回復しました。ドイツやフランスなど少子化対策が手厚い国では回復が早い傾向があります。日本も次元の異なる少子化対策を急ぎます。
出生数急減で80万人割れ、主な原因は?(日本経済新聞WEB版・2023年3月1日)
短期的には出産・育児への支援の充実が欠かせません。厚労省の調査では妻が35歳未満で理想の数の子どもを持たない夫婦の77%が「お金がかかりすぎる」ことを理由に挙げました。即時に必要な政策に25年ごろまでに年間6.1兆円規模を投じる必要があるといいます。子どもを産み育てやすい社会に作り替えていくことが大切です。
晩婚化が進み、初婚年齢は高止まり傾向
初婚年齢の年次推移
初婚年齢についてです。
人口動態統計によれば、2023年の初婚年齢は夫が31.1歳、妻が29.7歳で、2022年と同じです。
1947年以降の初婚年齢をみると、全体的に男女ともに上昇を続けており、晩婚化が進んできましたが、2014年頃から横ばいで、高止まりになっています。
過去を振り返ると、1966年~1974年の期間は婚姻数が増加し、初婚年齢も下降傾向にありました。
1970年前後は第二次結婚・ベビーブームといわれています。
婚姻率・都道府県別ランキング
2023年 婚姻率の都道府県別ランキング
2022年の都道府県別の婚姻率をみると、高い順のトップ5は①東京都 ②大阪府 ③愛知県 ④沖縄県 ⑤神奈川県の順。東京は2022年に続いてトップです。
また、1~5位は、順位は中で入り繰りしていますが、2022年と同じ顔ぶれとなっています。
逆に 婚姻率の低い県は、低い順で㊼秋田県 ㊻青森県 ㊺山形県 ㊹岩手県 ㊸高知県で、2022年と同様、東北地方が4県入っています。
出生率・都道府県別ランキング~東京都が史上初の1.0割れ
2023年 合計特殊出生率の都道府県別ランキング
2021年の都道府県別の出生率をみると、高い順のトップ5は①沖縄県 ②長崎県 ③宮崎県 ④鹿児島県 ⑤熊本県となっています。沖縄県と九州地方が4県入っています。
逆に 出生率の低い県は、低い順で㊼東京都 ㊻北海道 ㊺宮城県 ㊹秋田県 ㊸京都府。
東京都は史上初めて1を下回りました。
東京都~婚姻率がトップなのに出生率が最下位
都道府県別の婚姻率、出生率で相反する結果だったのが東京の数値。
婚姻率がトップなのに出生率が最下位となっています。
常識では、婚姻率が高ければ出生率も高いはずです。
以下の記事では、東京の出生率(合計特殊出生率)の分母に15~49歳の未婚の女性が含まれていることをその要因として挙げています。東京は未婚若年層が集中しています。
合計特殊出生率の分母は、15~49歳の未婚の女性も含みます。前述した通り、東京は、全国各地から未婚若年層をたくさん集積するエリアです。東京の合計特殊出生率が低くなってしまうのは、この若年女性の転入が多いことによります。その証拠に、人口千対の出生率は8.0(2018年)で全国7位と上位に位置します。合計特殊出生率の数字だけを見て、東京の出生が少ないとは言えないのです。
参考:20代独身の若者たちが東京に集まり続ける理由(東洋経済オンライン)
また、以下の記事では、東京都の一部エリアでは出生率が上昇している事実を挙げています。
出生率は、ファミリー向けの住居、保育所の充実といった、子育てや育児と仕事が両立できる環境等の整備が必要としています。
平成20−24年と比較し、平成25−27年の合計特殊出生率が増加した上位50の区市町村のうち,東京都内の区市が5つもランクインした。しかも、9位が東京都中央区、19位が東京都千代田区であり、各々の出生率は1.39(0.29の上昇)、1.28(0.26の上昇)となっている。
小泉政権以降、都市再生特区の政策などにより、都心の高層ビルや湾岸部のタワーマンションが次々に建設され、ファミリー向けのマンションも供給が増加。都心4区(千代田・中央・港・江東)の人口も増加した。このため、数年前、これらエリアでの小学校や保育所の不足が話題になったが、これら政策が中央区や千代田区などの出生率増に寄与した可能性がある。この事実は、地方創生で東京一極集中の是正を行えば、出生率が上昇するという一種の「神話」に関する再検証が必要なことを意味する。
出典:東京一極集中を是正しても出生率の改善はわずか-「こども庁」創設で子育てしやすい都市構造を構築せよ-(Yahooニュース)
東京の現状は、人口集中と住環境や子育て環境など様々な要因が絡み合っており、他の都市部の婚姻と出産について考える上でも参考にもなると思います。
婚姻率の国際比較(2022年統計)
主要国の婚姻率ランキング
人口動態統計の主要国の国際比較では、8カ国中、日本は5位で、韓国と同程度となっています。
シンガポール、アメリカ、ドイツなどが婚姻率が高いです。
世界全体を見ると、先進国は単独世帯が増加しています。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
日本は婚外子の割合が主要国の中で最下位(2020年統計)
主要国(OECD加盟国)の婚外子の割合(2020年)
更新されていないため、少し前の統計になりますが、出生数に占める婚外子の割合の順位を見てみます。
婚外子は、事実婚の両親の子の場合と、一人親(シングルファーザー、シングルマザー)の場合があります。
日本は2.4%と極端に低く41カ国中最下位。
前回のランキング(2016年)では、韓国が最下位でした。
一方、上位は中南米やヨーロッパの国が多くなっています。
トップのチリは75.1%、2位のコスタリカが72.5%。と大半が婚外子という状況です。
ヨーロッパの主要国ではフランス(62.2%)、ノルウェー(56.5%)、スウェーデン(55.2%)などが半分以上を占めています。
日本は前回(2016年)の2.3%とほぼ同率ですが、全体的には前回のデータより、割合が高くなっている国がほとんどです。
この結果は、各国の慣習や国民性、法律、宗教など複合的な理由による違いだと思います。
ニューズウィーク(日本版)では、この結果を以下のように分析しています。
日本や韓国ではごくわずかだが、中南米やヨーロッパでは半分以上という国が結構ある。北欧や西欧では事実婚が幅を利かせているためだ。フランスでは56.7%、スウェーデンでは54.6%が婚外子だが、何ら差別を被ることはなく、婚内子と同等の権利が保障されている。
日本でも2013年の民法改正により、遺産相続での婚外子の差別規定は撤廃されたが、社会的な偏見はまだまだ強いのが現実だろう。出典:婚外子が増えれば日本の少子化問題は解決する?(ニューズウィーク日本版2017年7月13日付)
また、婚外子割合の高いフランス、スウェーデンでは、出生率が回復しているようです。
内閣府発表の少子化社会対策白書では、以下のように分析しています。
フランスやスウェーデンでは、出生率が1.5~1.6台まで低下した後、回復傾向となり、直近ではフランスが1.92(2016(平成28)年)、スウェーデンが1.85(2016年)となっている。
これらの国の家族政策の特徴をみると、フランスでは、かつては家族手当等の経済的支援が中心であったが、1990年代以降、保育の充実へシフトし、その後さらに出産・子育てと就労に関して幅広い選択ができるような環境整備、すなわち「両立支援」を強める方向で政策が進められた。
スウェーデンでは、比較的早い時期から、経済的支援と併せ、保育や育児休業制度といった「両立支援」の施策が進められてきた。また、ドイツでは、依然として経済的支援が中心となっているが、近年、「両立支援」へと転換を図り、育児休業制度や保育の充実等を相次いで打ち出している。
結婚に関する意識調査
内閣府が発表した「男女共同参画白書」(令和4年版 )に掲載された、「人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査」(令和3年度内閣府委託調査)の結果から、独身者の結婚に関する内容をご紹介します。
結婚したい理由
「結婚したい理由」についての20~30代と、40~60代、男女別の回答です。
結婚したい理由について、20~30代、40~60代の男女ともに「好きな人と一緒に生活がしたいから」が最も多く、約5割となっています。
続いて、20~30代では「子供が欲しいから」「家族を持ちたいから」「精神的な安らぎの場を持ちたいから」「一人でいるのは寂しいから」が2~3割程度です。
40~60代では「家族を持ちたいから」「精神的な安らぎの場を持ちたいから」が約2割程度となっています。
積極的に結婚したいと思わない理由
「積極的に結婚したいと思わない理由」についての20~30代と、40~60代、男女別の回答です。
20~30代では、女性の場合、5割前後となっている項目は、「結婚に縛られたくない、自由でいたいから」、「結婚するほど好きな人に巡り合っていないから」。
40~60代では、先の2つの項目に、「結婚相手として条件をクリアできる人に巡り合えそうにないから」「結婚という形式に拘る必要性を感じないから」「今のままの生活を続けた方が安心だから」「介護を背負うことになるから」が加わります。
男性の場合、5割以上となっている項目はありませんが、「結婚に縛られたくない、自由でいたいから」「結婚するほど好きな人に巡り合っていないから」「結婚生活を送る経済力がない・仕事が不安定だから」が20~30代、40~60代で約4割となっています。
20~30代、40~60代ともに、全体的に女性の方が割合が高く、「結婚生活を送る経済力がない・仕事が不安定だから」だけが男性の方が高くなっています。
男女差は、20~30代はあまり変わりがありませんが、40~60代(男性40.9、女性31.4)と差が大きいです。
より詳しい内容こちらの記事にまとめています。
まとめ
2023年は婚姻数が前年より大幅に減少しました。
2022年は婚姻数が前年より少し増加しましたが、長期的には、人口減少、高齢化の進行で、婚姻率の減少と晩婚化、出生率の低下傾向は今後も続いていくと予想されます。
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