高齢化社会の中、生涯未婚率の上昇、死別、離婚の増加などで、配偶者や家族がいる高齢期が当たり前ではなくなっていると言われています。また、今は家族や配偶者と一緒でも、誰でも一人暮らしになる可能性はあります。
ここでは、年々増加し続けている死別者(配偶者と死別された方)に焦点を当てて、各種統計や研究所の調査などを元に、死別者の現状や傾向などをご紹介します。
増加し続ける死別者
高齢者世帯が急増
厚生労働省「国民生活基礎調査」によれば、高齢者(65歳以上)のいる世帯が全世帯に占める割合は、2001年度で35.8 %でしたが、2018年で48.9%と大幅に増加しました。
高齢者のいる世帯の内訳(2018年)をみると、「単独世帯」が683 万世帯(27.4%)と、「夫婦のみの世帯」(32.3%)に次いで多くなっています。
高齢者世帯の増加に伴い、高齢者の独り暮らし(単独世帯)は年々増加。2015年は、617万6千人で、1990年から3倍以上になっています。社会保障・人口問題研究所の将来推計では、今後も増加し続けるとされています。(図1)
また、死亡年齢が高齢化しています。厚生労働省「人口動態調査」によると、死亡者のうち80歳以上の割合が、2000年は男性33.4%、女性56.3%でしたが、2017年は男性52.8%、女性74.9%と大きく上昇しました。長生きする人が増えていることで、一人暮らしの死別者のさらなる高年齢化が予測できます。
死別者が960万人。女性割合が圧倒的
高齢者数が増加する中、配偶者と死別した方も年々増加しており、2015年には965万8千人に上りました。(図2)うち女性は800万4約千人(82.9%)と、圧倒的に多くなっています。
また、2015年の独身者全体の数は約4,389万人(15歳以上人口の40%)で、内訳が未婚66%、死別22%、離婚(離別)12%と、死別は離婚より多くなっています。(図3)
「没イチ」という言葉 知っていますか
数年前、配偶者と死別した方を指して「没イチ」(ボツイチ)と呼ぶ動きがありました。
元第一生命経済研究所主席研究員で、「没イチ~パートナーを亡くしてからの生き方~」(新潮社)の著者・小谷みどりさん(現・シニア生活文化研究所所長)が広めた言葉です。
この言葉は、NHKのクローズアップ現代「おひとりさま上等!“没イチ”という生き方」(2017年6月13日)という番組でも取り上げられています、
配偶者の分まで前向きに生きる人が増えてほしいという願いを込め、「バツイチ」になぞらえた命名だとされています。
ただ、言葉の持つ響きや印象などから拒否感を示す人がおり、「自分から明るく言える人はいいが、そうでない人も多い」などの意見がネット上で見られます。
有名人では、市川海老蔵さんはブログ上で不快感をあらわにしました。「私は嫌い」市川海老蔵ブログ
死別後の変化~女性の方が行動的な傾向か
第一生命経済研究所 ライフデザイン研究所(当時)小谷みどり氏の2017年の調査結果「配偶者と死別したひとり暮らし高齢者の幸福感」(配偶者と死別し、一人暮らしの60~79歳の男女1000人を対象)では、女性と男性による死別後の変化の違いについてまとめています。
同調査の「配偶者との死別で生活がどう変化したか」をたずねた設問では
ひとりで過ごす時間の変化については
「ひとりで食事をする機会」は、男女ともに75%程度が「とても増えた」と回答。
「誰とも一日中話さないこと」は、男性の39%が「とても増えた」と回答し、女性の27.4%を大きく上回った。ただ、「少し増えた」という回答を合わせると、男女とも7割程度と大多数を占めたとしています。
「友人と過ごす時間」「別居する家族と過ごす時間」については
「とても増えた」「少し増えた」と回答した人は女性に多かった。
そして、友人と過ごす時間については、女性の58.4%が増加したのに対し、男性は31.4%にとどまったとしています。
幸福度に関しては
0~10点で幸福度を回答してもらった結果では、平均点が男性7.09、女性7.82と女性のほうが高かったとしています。
同調査では、考察として、多様な関係の友人がいて、友人と過ごす時間が増えていることなどが、幸福度に影響を与えている可能性があるとしています。
・女性の場合は友人と過ごす時間も増加するのに対し、男性では、一緒に過ごす相手や会話の機会が消滅し、一人で過ごす時間が大幅に増加している可能がある。
・女性では多様な関係性の同性の友人がいるが、男性では時間を共有する友人に特化していた。将来の介護の不安だけでなく、話し相手や頼れる人がいないなど孤立への不安を抱える男性は少なくなく、飲食を共にし、話し相手になる友人がいないことは、少なからず幸福度の低下に影響を与えている可能性が示唆された。
出典:配偶者と死別したひとり暮らし高齢者の幸福感(第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部 主席研究員 小谷みどり)
死別者の声
当会には、死別者も入会されています。会報誌に寄せた寄稿では、配偶者を亡くした大きな喪失感や、そこから前に進もうとされる気持ちが伝わってきます。
3 年前に妻を亡くしました。子供も無く喪失感だけが残りました。
突然一人になり、心のさみしさは言い表し様がありませんでした。
仕事で孤独を紛らわしても、家に帰ると時間が止まっています。
自分でもこのままではいけないと思っています。
前を向いて再出発のきっかけを探したいと思います。
闘病生活の結果、3 年前に主人を亡くし、ココロも体もぼろぼろになってしまいました。
お互いに価値観が一緒で、なんでも話せる夫婦で、大親友でもありました。
自分の片割れがなくなってしまったようで、さみしくて、苦しくて、涙が止まりませんでした。
今は、さまざまな癒しで悲しみから、やっと立ち直りつつあるところです。
夫が亡くなった。私の腕の中で逝ったのに、その現実を受け入れられない私。
その事実を受け入れられない私。もう一生あえないなど信じられない私。
自分の体も心も人生も、もぎとられた様で、この世のすべてが静止してしまい、全てが終わったと、そして私の世界からすべての色が消えてしまいました。
妻を亡くして 4 年経ちます。苦しい時期を乗り越え、やっと落ち着いてきました。
仕事にも友達にも恵まれていて、なに不自由のない生活ですが、これからの人生を考えますと、独りで生きていくにはあまりにも寂しくて、良き出会いが必要な時期がきたと思います。
夫に突然先立たれてから 2 年半経ちました。
兄妹も子供も無い私は、荒野に一人置き去りにされたようでただただ半年間泣き暮らしておりました。
夫の姉妹夫婦と私の昔からの友人に助けられてなんとか自分をとりもどしつつあります。
今年 1 月に家内を亡くし、全く予想外の一人での生活が始まりました。
家内が亡くなり、一人での生活を何とか構築しようと試みていますが、人との繋がり(特に異性)を作るきっかけを、中々見出せません。
死別者が参加できるさまざまな集まり
前述の研究所の調査結果などから考えても、死別者が残りの人生を豊かに過ごしていくためには、交流の機会を増やしていくことが必要であると思います。
当会は、独身の方を対象とした交流会やオフ会を開催しています。
そこには、配偶者と死別された方だけではなく、未婚の方、離婚された方も参加され、独身という共通項を持った方が交流を深めることができます。
また、死別者限定の「ツベシの会」も数ヶ月に一度開催しています。
もともとは「死別者の会」としていたのですが、死別という言葉をあえて使わないために、シベツをひっくり返して「ツベシ」としました。
独身、あるいは、死別者という共通項をもとに、さまざまな集いに参加してみませんか。
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