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2001年9月20日 北海道新聞社説

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米国に届け連帯の心

札幌を中心にボランティアと地域活動に取り組む民間非営利団体(NPO)の「ボラナビ倶楽部」が、米国中枢同時テロの被害者に向け、義援金の募集を始めた。日本政府がまだ対応を決めていなかった段階で、市民レベルの素早い動きとして、率直に評価したい。

米国はウサマ・ビンラディン氏を黒幕と断定し、拠点を置くアフガニスタンへの軍事報復を急いでいる。一般市民の巻き添えは必至だ。ボラナビの内部議論では「救援の対象は米国だけでいいのか」との疑問も出た。

だが「米国の軍事報復を応援するのではない。支援の対象はあくまで民間人」との一点でまとまったという。報復攻撃が始まり、アフガンなどで一般人に被害が発生すれば、そちらにも義援金を募る考えだ。

森田麻美子代表は「軍事報復も自衛隊の出動も、絶対に反対」と思いを語りつつ「民間人が被害に遭ったことが問題なのです」と説明する。

現在のところ、義援金を募る民間の動きは熊本市のNPOと福岡市の銃犯罪反対組織などにある。 日赤、救世軍なども取り組みを始めた。

憎むべきテロで倒れ傷ついた被害者のため「傍観せず何かをしたい」と考える人は多いのではないか。だが、地球半周を隔てた日本で、市民に出来ることは何だろう。考えてみれば、その選択肢は意外に狭い。

現地での救援活動には米国側の要請がない。アジア医師連絡協議会(AMDA)や日本レスキュー協会などは、そのために出動を見送った。日本人学校の児童生徒の心のケアでは、文部科学省が道都大の小沢康司講師を派遣した。

結局、市民に残る方法は「テロに負けないで」とのメッセージにたどり着く。募金ならば、手紙を送る相手のいない人、英語の苦手な人も、気持ちを託すことはできる。

募金という形を「日本人的」と言ってしまえばそれまでだ。資金援助の必要性にも疑問の声はあろう。だが、何もしなければ連帯は生まれない。テロによる死傷者は米国人だけではないことも考えたい。5,600人を超える死者・行方不明者の国籍は、62ヵ国・地域に及ぶという。

募金は、ボラナビの「ねっとぼ金」で扱っている。メールで申し込んで払込用紙の郵送を受け、コンビニに振り込めばよい。500円から99万9,999円まで。もっと多額の場合は分散して受け付ける。

米国は日本に自衛隊派遣を求めている。日本国憲法が禁ずる集団的自衛権の絡みで、政府の苦慮は続く。  市民の活動は政府とは別だ。それぞれが信ずる方法で連帯の手を差し伸べること、その心を伝えることが、草の根友好には大切ではないか。

(2001年9月20日 北海道新聞社説)

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