笹村一(ささむらはじめ)
NPO 法人リンカーンフォーラム北海道代表理事
1955年歌志内生まれ。もともとは国鉄マンだったが民営化への流れで銀行へ入社。その後保険の世界に飛び込み、1993年に代理店を設立。現在、?アクトサービス代表取締役。その一方で、道内選挙に伴う公開討論会を開催・支援しているNPO 法人リンカーンフォーラム北海道を立ち上げた。
立候補する人を知って投票を!
あっという間の10年。1998年7月参院選を迎えるにあたり掲げたのが、「『公開討論会』を開催し、立候補する人を知って投票を」でした。これが、リンカーンフォーラム北海道の活動の始まりです。 1997年、人間学講座のカリキュラムを東京で受講していた私は、その講師である小田全宏氏から、2年前の京都市長選において開催した公開討論会の話を聞きました。以前からボランティアを何か一つ手掛けたいと思っていた私は、「これだ!」という想いに駆られ、何の迷いもなく翌年から活動に入りました。
外国、特にアメリカは企業経営者がボランティアに取り組むことは当たり前とされていて、ボランティアは社会のなかの潤滑油の役割をはたしています。ボランティアは、社会を知ったり自己啓発や人間としての成長を得られたりする素晴らしい活動ですが、日本では、その程度により、時間やお金に余裕がないと続けることが難しいと聞いていました。
私はボランティアについての考えを自分なりに持っています。それは小さなボランティアのチャンネルを一人ひとりが気持ちのなかに持つことができると、世の中は変わるということ。チャンネルをもっていることで、「ボランティアやりまーす!」と言わなくても、日常の色々な場面で自然に行動が取れると思うのです。
私の場合、この公開討論会の活動にどっぷり漬かりすぎたばかりに、この10年間で2度ほど活動断念の窮地に追い込まれました。仕事が忙しい、仲間が少なくなるなど、誰もが遭遇することが私にもやってきたのです。やめることは簡単、やめて楽になりたい! 自分の志は本物か? 今までの活動は何だったのか?三日坊主、お世話になった人がなんと思うか? 頭の中で色々な想いが交錯しました。そこで、信頼していた経済人の社長、大学の教授に相談をしてみました。すると、「やめるのではなく、NPO 組織でやってみては」と強烈なアドバイスを戴き、法人を設立する流れができてしまいました。その時、「自分はこの活動をやめることはできない、続けるしかない!」と腹をくくったことを今でも鮮明に覚えています。
ひとりの想いから始まった。
活動を始めた当時は公開討論会を理解している人はほとんどおらず、「笹村が選挙に出るための政治活動ではないのか?」と思われたこともありました。でもそうではありません。私はこの公開討論会がこれからの時代、市民の間で必ず育てていかなくてはならない大事なことであると考え、選挙の前の当たり前の仕組みとして定着するよう活動していこうと決意したのです。
そこでまず、周りの人たちに公開討論会の意義と効用を説明し、4、5人の仲間をつくりました。リンカーンフォーラム「公開討論会を実施する道民の会」の立ち上げです。1998年の参院選から始まり、2007年の統一地方選まで64回の公開討論会を手掛けてきました。
この活動に携わり、とても多くの人に出会いました。それは本当にあらゆる人々です。政治家、経済人、学者、他のボランティア団体主宰者、学生、主婦、町内会役員など、道内はもとより、全国津々浦々の人々…。同時に選挙や政治の世界、世の中の仕組み、法律や市民自治、何といっても自分たちのリーダー像、政治家はどうあるべきかということを学ぶ機会にもなりました。今は、この10年間の活動が実り、素晴らしい仲間がこの活動を支えてくれて、リンカーンフォーラムの知名度も上がってきました。
公開討論会は、立候補する人の政策、人柄、感性、情緒、声や表情などを知って投票してもらうことが目的です。成熟した社会では投票に責任を持たなければなりません。選挙の前には必ず公開討論会を開くこと、自分が投票する人を知ることが、当たり前の制度、仕組みとなるよう願っています。立候補する人には、自分を知ってもらう場として公開討論会を有効に活用していただきたい、特に新人には大きなチャンスの場なのですから。今年の春の統一地方選、小樽市長選の公開討論会が良い例です。当日、小樽市民会館には1,000人の立ち見が出るくらいの市民が入り、現職の山田候補、元衆院議員の佐藤候補、そして市議を一期務めた34歳の森井候補が一堂に会し熱く討論しました。選挙結果は現職が勝利したものの、投票数は3人ほぼ互角の選挙となりました。
小樽の場合に限らず、来場された方がその様子を周りに伝え、新聞マスコミも大きく報じることで、公開討論会が候補者の色々な側面を知る機会になることは間違いありません。こうした討論会が盛り上がる選挙は、当選した人の4年間の仕事の内容に良い意味で影響が出ると信じています。 小樽の公開討論会の主催者は大学院生で、やはり一人の想いからの始まりでした。ボランティア行動を通じて社会に少しでも良い影響を与えるという充実感や達成感、そこから学ぶこと、人との出会。この10年間で私の人生が変わったと言っても過言ではありません。 毎日少しだけ前進することと、迷った時には原点に返る!これが私の信条です。
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