朝日新聞出版AERAアエラ(2024年12月23日号)で紹介されました。

2008年7月 高木晴光さん〜NPO法人ねおす理事長

高木 晴光(たかぎ はるみつ)
NPO法人ねおす理事長

自然学校の様子をブログ「高木晴光の日々こうかい記」で紹介していますので検索して見てください。
メール harusan@neos.gr.jp

目次

ぶなの森自然学校

 私は今、北海道の南、渡島半島の付け根に位置する人口3,300人余りの小さな農山村地域、黒内町に住んでいます。元小学だった施設を借りて、「ぶなの森自然学」という都市と地域内の交流を創る事業を「仕事」としています。私が代表をするNPO法人ねおすが、全道に展開する活動拠点(札幌、登別、東川、弟子屈、中別)のひとつです。
自然学校は、NPO活動と暮らしが一緒になったコミュニティ活動でもあります。私と妻、常勤スタッフ3人、小学生の山村留学生4人、研修やボランティアで長期滞在する2人に、ヤギ3頭、羊2頭、犬2頭、ニワトリ5羽で、合計11人と12匹が暮らしています。動物の世話があれば畑仕事もある、子ども達の学校のPTA活動や、地域のお年寄りの私的な依頼ごとにも応える、地域の子ども達が遊びに来たり、そのまま全員で食卓を囲んだりすることが何度もあります。仕事とプライベートが「重なりあってしまう」暮らし方をしています。

ぶなの生育北限林でガイド

 交流事業は、子ども達の体験活動がメインです。特に夏休みには、30名の子どもとスタッフ20名で展開します。スタッフには、台湾の大学からの実習生や、国際ボランティア組織NICE を通してアジアやヨーロッパから参加している者もいて、都合1ヶ月間、大人達の大合宿場と化します。北限のブナの森を初めとする自然ガイドの他、農家の女性と豆腐や味噌づくりをするような「田舎の旅づくり=ルーラルツーリズム」をおこなっています。
自然学校のもうひとつの事業は、「未来を担う自主自律した人材の育成」と高らかにミッション(社会的使命)を掲げる「人づくり」です。他のNPO や大学から若い人材が、時には年配の方々が、中・長期に滞在し、自然学校の営みや地域活動を共にします。
自然学校をコーディネートするNPO 法人ねおすのミッションは、自然体験活動をベースにおこなう「自然と人、人と人、社会と自然のつながりづくり」であり、少し難しく言うと「社会関係資本を作る仕事」です。そして、北海道らしい自然体験文化を広めてゆきたいという思いがあります。

それなりに波乱の人生

 ねおすの前身・北海道自然体験学校NEOS(Nature Experience Outdoor School)を立ち上げた頃は、ちょうどバブルが弾けた時でした。大学を卒業してから貿易業や不動産開発を職として来たのですが、悩んで転職(3回)し、いわゆるリストラにも遭いました。今思えば、その波乱がなかったら、本当に自がやりたい仕事をえる機会を逸していたかもしれません。最初の就職をしてから3年後に、一度、自然塾を立ち上げようと試みましたが、若気の至りで断念。その後は、バブルの右肩上がりの経済活動に企業戦士として、まさになり振り構わずに「売れること」をミッションとして邁進していました。
ですからリストラは、それまでの自身の価値観を見直す再構築でもありました。たどり着いた決心は「自然に関わる仕事がしたい」ということでした。
良し悪しは別にして、「自然を壊して」飯を食う仕事はいろいろあります。高校時代は自然保護活動をしていた私も、仕事に就いてからは「ゴルフ場開発準備室主任」なんて肩書きを持っていた時代もありました。その後、NEOSで有料自然ガイドを始めた16、7年前は、まだそんな仕事をしている人種はごく稀でした。「お金をとって自然へ連れ出す輩は自然破壊を助長する」と新聞投書があったくらいです。しかし、バブルの崩壊は人々の価値観も多少なりとも変化させ、「モノから心の豊かさ」というキーワードがマーケティングに登場したと思います。さらには阪神淡路大震災の復興への過程が市民活動の変容を促したり、「ガイアシンフォニー(地球交響曲)」というドキュメント映画が私達、環境・自然系の人種に大きな影響を与えたりしました。1992年前後に「自然体験活動」を仕事として始めた仲間は全国に数多くおり、それぞれ一人が始めた活動が多くの人々を巻き込めるようになっています。その仲間達もいつの間にやら50代を迎えました。若い世代は現れましたが、最近は、NPO家業へ転じる若い人が減りつつあると感じています。「今だけの好景気」のせいなのでしょう。そして、未来への漠然とした不安がに大きくなり、若者の保守化も心配です。新しい時代を築く夢を持ち、その実現をあきらめない力、そして自分の変化を恐れない心を持って欲しいものです。

夏休みの3週間活動のメンバー

 ずっと都会育ちだった私が田舎を生活拠点として8年。都会では見えにくい社会の矛盾、問題を数多く実感して来ました。農業や漁業、高齢者福祉、医療、子どもの環境、コミュニティの崩壊など、さまざまな社会問題は、のんびりしているように見える田舎ほど、実に深刻に身近な課題として複雑に絡み合い存在しているということがよ
くかります。しかし、本来田舎が持っている機能、食糧の生産、風景、緑、おいしく透明な空気、輝く星空、ゆっくりとした時間の流れを感じるゆとりなど、田舎の社会的価値というものがあります。それらを改めて都市生活者に感じて欲しい、そして地域住民にも再発見して欲しいという気持ちが私の中で段々と強まっています。田舎でこそ、物事の様々な社会問題を大局的に捉えて解決してゆける可能性があります。
「新田舎づくり」―それが、私の今の使命です。

黒松内ぶなの森自然学校
寿都郡黒松内町字南作開76
TEL:0136-77-2012 FAX:0136-77-2020
メール buna~ns@d2.dion.ne.jp
ホームページ http://www.buna-cross.org/

NPO法人ねおす
TEL:011-615-3923 FAX:011-615-3914
ホームページ http://www.neos.gr.jp/

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