澤出桃姫子(さわでときこ)
NPO 法人ホームヘルパーノア専務理事。遠軽町出身の59歳(団塊の世代)。青葉地区まちづくり会議高齢者対策部会員、民生委員、財団法人さわやか福祉財団インストラクター、NPO バンク理事、札幌市
在宅福祉活動団体連絡会会員などを務める。
失敗から学ぶ
育った環境で人生の方向性が決まるといわれておりますが、私の場合は1948年に、遠軽町の8人兄弟の父と12人兄弟の母の間に生まれました。両家とも農家で、結婚式はもとより、葬式も自宅で行っていました。行事がある時は一族が集まり、賑やかだったことを覚えています。年老いた祖父母を叔父や叔母が交代で介護するために、私も催事の度に帰郷して、子どもとしての役割りを果たしていました。このような一族の後姿を見て育った私のライフワークには、当然、子育てと親の介護が入っておりました。1998年、想いだけで始めた義母の介護。ベッド、昇降機、手すりなどを準備して、ハリキッテおりましたが、見事3ヶ月で義母は義弟のところへ。つまり失敗に終わりました。頭で考えたことと実際では違うのだと痛感し、どこに問題があったのか原因が知りたくて、即、ヘルパー資格の取得や介護関係のセミナーなどに参加したり、厚生白書を読んで学ぶことから始めました。そして、子どもの数の減少などによって家族の介護力が弱くなり、介護者に精神的・身体的負担がかかりすぎ、介護される人も介護する人も尊厳が保てなくなっていると気づきました。弱くなった家族の介護力の一端を地域で担うことが問題解決への道と確信し、1999年、「自分たちの地域は自分たちの手で」と、厚別区青葉町における相互支援システムづくりに関わる活動を開始しました。
地域のルールを現状に合わせる
社会変化のスピードが速いのか、現実にそぐわなくなったものが地域には残っています。私が住む青葉地区もそうでした。青葉町は40年前に原野を切り開き、副都心新さっぽろに隣接した住宅地として開発され、現在の人口は8,200人です。当時、夢をもって移り住んだ40代の方々が現在は80代になったということもあり、高齢化率は札幌市で一番高く、3人に1人が65歳以上です。このように様変わりをした我が町ですが、地区計画の土地使用制限が以前のまま残っていました。終末期まで、住み慣れた地域で安心して家族と住めるように、私は地域の人たちの応援や協力で数々のサポートシステムを構築してきましたが、この地域はNPO(市民)が活動拠点に使用してはいけない地域でした。高齢者の多い青葉町にとって現状にそぐわない地区計画はおかしいと考え、即、行動を開始。青葉町の自治会は元より、色々な方々と協力し、1年半かかりましたが、住民発意で土地使用制限の変更を成し遂げました。この経験から、地域の特性や課題をみんなで共有し、みんなで解決方法を考えて行動を起こせば、地域を変えられると確信しました。現在、私たちは地域の空き家を2軒借り、体の不自由な方や認知症を伴った方などが食事や入浴、レクリエーションを楽しめるデイサービスを展開しています。会社の持ち家だった1軒は、「花梨の森」と名づけ、ベッドを5つ置いて、数日間、家庭的な雰囲気の中で滞在もできるようにしました。もう1軒は画家だった家主の名前から「橋本さん家(ち)」と名づけ、油絵をたくさん飾って利用者の皆様に楽しんでいただいています。その他、居宅介護支援サービスや訪問介護も行っており、さらにこの7月からは、毎週月曜日、男性も含めて地域の方々が自由に集える場として一室を開放することにしました。
今後ますます高齢化が進み、ちなみに私もあと5年で介護保険の給付対象となりますが、高齢者が地域を支え、地域が高齢者や若い世代を支えていくようになるでしょう。運が良いというか、我が町ではもう既に始まっています。地域を変革するために、70代、80代の先達がニコニコしながらまちづくりに励んでおり、私も福祉NPO 人としての役割を果たすべく、まちづくりに参画しています。今後も、地域関係機関と連携、協働し、誰もが尊厳を持って暮らしていける地域社会創造のため、地域の皆さんと一緒に考え、行動を起こしていきます。私が考えるNPO 人に必要な特性〜多彩で、しなやか、透明性・創造性があり、自身の足元から課題を見つめること〜を楽しんで実践しながら。
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札幌市を活動拠点としている在宅福祉分野のNPO 法人、団体、地域ボランティア同士が新しい「ふれあい社会」づくりを共に広げていこうと、勉強会や情報交換、ネットワークによる相互支援を行っています。
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