朝日新聞出版AERAアエラ(2024年12月23日号)で紹介されました。

2009年6月 小山内美智子さん〜社会福祉法人アンビシャス施設長代表

小山内 美智子 (おさない みちこ)

社会福祉法人アンビシャス施設長代表
1977年、介助を必要とする人の自立生活を支援する「札幌いちご会」設立、現会長。85年、長男出産。99年、身体に障がいを持つ人が、親元などを離れて暮らすことを目指して自立生活体験ができる施設、「アンビシャス」設立。宮城大学や北海道大学で講師を務める。著作多数。2009年6月「わたし、生きるからね〜重度障がいとがんを超えて〜」を出版予定。

目次

ボランティアが人生を変えた

 1977年、どんなに障がいが重い人でも普通に地域社会で生きようと訴え、「札幌いちご会」が誕生しました。障がい者たちだけの力では何もできないので、ボランティアを私たちは必死で集めました。呼びかけのちらしなどを見て、社会を変えようと心を燃やしている若者たちがたくさんやって来ました。そのおかげで、家や施設に閉じこもっていた障がい者たちは、ボランティアと一緒に買い物に行ったり、公園に行ったり、居酒屋に行ったりして、笑顔が絶えませんでした。生きている実感が沸きました。

手足が不自由な筆者。職員にパソコン操作を指示

 ある施設に長くいた30代の脳性麻痺の女性は、手術の後遺症で体が半分に曲がり、お腹と太腿がくっついていました。誰も、彼女をどうやって抱き上げて施設から出し、車に乗せていいのかわかりませんでした。でも、度胸あるボランティアの男性が、「なんとか抱き上げてみるよ」と言って、彼女をいちご会に連れてきてくれたのです。彼女は涙を流して、「生きているってことを初めて感じました」と言いました。彼女が命がけで施設を出てきて、肉が嫌いなのにジンギスカンパーティーをよく開き、ボランティアの方に肉をご馳走して、自分は野菜だけ食べていたシーンを私はよく思い出します。もう彼女はこの世にはいませんが、彼女が満面の笑みを浮かべ、電動車いすで散歩をしていた姿が忘れられません。度胸のあるボランティアがたくさんいたからこそ、彼女の人生は楽しく、悔やむことなく生きられたのです。短い命でしたが、彼女をサポートしてくれたボランティアの方には一生感謝し続けたいと思います。

優しく共に生きる仲間たち

 札幌いちご会を作って32年が経とうとしています。数え切れないボランティアの方々のおかげで、ここまで歩んでこられました。でも、年々ボランティアの人数は減り、今、私たちはホームヘルパーの力で生きています。しかし、ヘルパー制度は規則の縛りがあり、ケアを受けられる時間や内容が決められていて、自由に生きているとは感じられません。ある意味では、ボランティアの時代のほうが良かったと思います。

 当時の私の部屋は常に合コン状態で、若い人たちが食べ物を持ってきてくれたり、どこかから紙を調達してきてガリ版刷りでいちご通信を作ってくれたりしました。時には夜遅くまで飲み明かし、障がいがあるとかないとかいうことを忘れさせてくれたものです。いちご会副会長の澤口京子さんは、ボランティアの方と結婚しました。私はエリート学生を狙っていたのですが、他の美しいボランティアの女性に奪われてしまいました。嫉妬していた時もありました。でも、真剣に愛してくれた方もいました。他にも、何組かのカップルが生まれたり、真の友情が芽生えたりと楽しい時代でした。ボランティアは時には友人であり、アシスタントであり、母であり、恋人にもなれるのです。これは、ボランティアも障がいがある人も、自分の生き方に自信を持ち、平等で生きられる社会を作ろうという信念がなければできません。思いつきでちょっと親切にしてみたいからとか、障がい者を研究したいからなどという気持ちでは、同じ人間として付き合うことはできないと思います。人間同士は喧嘩をしたり、仲直りをしたり、愛し合ったり、お互いに心にある思いをぶつけあいながら尊敬する関係を作っていきます。真のボランティアの関係も同じではないでしょうか。「ボランティア」という言葉が将来的には無くなることが、私の夢です。皆で一緒に学校に行き、働き、家庭を作れるように社会を変えていくことが、私たちの仕事だと思います。

 2008年は、私にとって大変な年でした。悪性リンパ腫という重いガンにかかり、病院に入院するとヘルパーを切られ、なのにケアをする人がいなければ退院しなければいけない状態となり困りました。一人息子は、理学療法士の仕事を休んで私のケアをする決心をしていました。しかし、30年以上来てくれているボランティアの方が、息子に「経済的なことを守りなさい。小山内さんのケアはボランティアを集めお願いしましょう」と言ってくれました。そして、学生さんが4人もボランティアにきてくれました。ヘルパーの方も時給を下げ、3時間いても2時間としてくれたり、ボランティア精神でケアをしてくれました。おかげで、私は奇跡的に抗ガン剤が効いて99%のガンを消すことができ、今はこうして生きて、原稿を書いています。またお会いしましょう。

ボランティア歓迎

アンビシャスにいる障がいのある仲間たちは、社会の人たちと交流したいと憧れています。今は、陶芸をするボランティアが大勢います。これからは、一緒に健康体操をしたり、お菓子を作ったり、トンボ玉(ビーズ)で世界に一つしかないアクセサリーを作って行きます。興味のある方はいらっしゃいませんか? 一緒にお茶を飲み、お話ししてくださるだけでも嬉しいです。よろしくお願いいたします。

社会福祉法人アンビシャス

札幌市手稲区西宮の沢6条2丁目5-12
TEL:011-669-2222
ホームページ http://www.s-ambi.jp/

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