朝日新聞出版AERAアエラ(2024年12月23日号)で紹介されました。

2009年7月 横須賀邦子さん〜NPO法人アース・ウィンド代表

横須賀 邦子(よこすか くにこ) 

東京築地生まれ。「火事と喧嘩は江戸の華」的ココロで前進してきたが、この頃は穏やかになりたいと願う。NPO はボランティア業と誤解されるので、正しく伝えるため粉骨砕身努力中。だが社会の反応は変わらずで、穏やかには遠い毎日。映画鑑賞と料理で息抜きをする。共著「北海道ネイチャーツアーガイド」

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山に魅せられて

 今は北海道の大自然に身を置いている私ですが、生まれも育ちも東京です。悲しい思い出として残っているのが、小学生だった夏のこと。巣鴨の自宅裏庭に白鷺(しらさぎ)が休む湧き水の出る池がありましたが、ある日、ブルドーザーが入って工事が始まりました。そしてたった6ヵ月後に、5階建てのマンションが建ってしまったのです。「じゃんけん原っぱ」も、冷たい透明な水で満ちていた池も消えました。子どもだった私には、当然理由は分かりませんでした。近所の友達と遊ぶ場所が無くなって、とてもむなしかったのを覚えています。

 山登りが好きになったのは、中学2年の全校登山がきっかけです。夏の炎天下、栃木県の鶏頂山(けいちょうざん)に、みんなで何度も休みやすみ登りました。ようやくたどりついた山頂で、思わず目を見張りました。目の前に広がる湿原いっぱいに、黄色いニッコウキスゲの群落がありました。登山の苦しさが吹き飛ぶような気がしました。その後の春休みには、家族と尾瀬を訪ねました。高地にある広大な湿原で、日本百景に選定されています。そこでミズバショウの群落を見た時にも、自然が作り出す美しさに驚きました。

芦別方面を拝見に幌向岳(ほろむいだけ)山頂にて

 就職してからも、休みになると日々の喧騒を抜け出し、南アルプスやその周辺の山々を訪ね、山中に数泊してくるような生活をしていました。ある時、大学の山岳部の人に山の写真を何枚かもらいました。その中の1枚が大雪山の写真で、だだっぴろい平地にお椀を伏せたような丸い山々があり、興味をそそられました。そして気持ちを抑えきれず、ついに、自然保護活動をするレンジャーの仕事がしたい旨を手紙に書いて、関係機関に送ってみることにしました。それが旭岳高山植物監視員の職を得たきっかけで、もう38年前になります。

自然の仕組みを自分で伝えよう

 旭岳を含む大雪山を初めて訪ねた時は、原始的で奥深い森林を想像していました。ところが、2千メートルの標高にある稜線上の登山道の脇にはコマクサやヨツバシオガマが満開で、広大なお花畑を作っていました。本州の山でこれほど大きい高山植物群落を見たことはなく、感動しました。高山植物監視員の仕事は、ロープウエーで上がってきた観光客に、「植物を踏みつけない、花を折らない、持ち帰らない…」と1日に百回繰り返すばかり。それでもマナーは守られず、人道は広がり、高山植物の群落は縮小、後退しました。これではいけないと思いましたが、どこに働きかければいいのか分からず途方にくれました。耳を貸してくれる機関はありませんでした。

 ならば、自然の仕組みや壊れやすさを自分が伝えよう、とガイド活動を始めました。まずびっくりしたのが、クマの生態について北海道の人たちが誤解していること。郷土に生息する最大の陸上動物の生態を正しく理解し、森のアンブレラ種※としてクマの存在を啓蒙する必要を感じました。並行して、クマと人のトラブルを防ぐ対策として、「ヒグマ対処学習ツアー」を研究者と協働で開発しました。全国に先駆けて北海道でスタートしたこのツアーは、本州のTV、ラジオ、雑誌などに紹介され、クマに関連した地域のNPO 活動が全国各地で一気に盛りあがりました。私たちが、信頼できる活動を提供するためにNPO法人化したのは2000年6月。あっというまに10年を迎えました。

 ちなみに、会の名称を決めたのは深夜、「クマの防除マニュアル」作成に取り掛かっていた時です。海外には優れたクマ防御に関するテキストがあるのに、日本にはありません。そのため、なんらかの対処法を広めることが必要でした。しかし、「もしイベント中にクマが出没したら、どうしよう」とか「講習どおりにしても、完璧にクマから身を防げるとは限らない。この事実とどう向き合ったらいいのか」と私は不安にかられていました。するとたまたま、アメリカのアーティストグループ「アースウインド&ファイアー」の歌詞が耳に飛び込んできました。「宇宙船地球号に乗って宇宙に飛び出そう〜」(ファンタジア)。会の名をそろそろ決めなくてはならない時だったので、「やっちまえ」というノリで、日本語では「地球の風」という意味になる「アース・ウィンド」に決めました。

 現在、事務所は複数のアルバイトと、声をかければ駆けつけてくれるボランティアの方々に支えられて運営しています。ボスの私は、残念ながら無給です。とはいえ、大金が動く業務受託はやたら忙しく、受託費で補えない費用も発生するので申請は控えているところです。将来的には全て自主事業でまかなう計画で、私は大学に入って、経営学を学びたいと思っています。

ぜひご参加ください

NPO 法人アース・ウィンドでは、登山ガイドツアーや環境旅行プログラムの実施、生態系観察会や環境ガイド育成講座、各種講演会を開催しています。会の予定はホームページでご覧いただくか、ご連絡いただきましたら予定表をFAX しますのでお知らせください。

NPO 法人アース・ウィンド
江別市野幌町30-1 
メール staff@e-wind.org
TEL・FAX:011-381-9233 ホームページ http://e-wind.org/

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