朝日新聞出版AERAアエラ(2024年12月23日号)で紹介されました。

2009年8月 杉森洋子さん〜NPO法人札幌VO代表

杉森洋子(すぎもりようこ)

NPO法人札幌VO代表
1952年黒松内町生まれ。宝塚歌劇団出身の祖母の影響で音楽と出会う。中学3年の転校を機に人生と向き合う貴重な体験をする。オリジナルテープ1本、CD3枚を製作。生涯メッセージアーティストでありたい。料理人の長男とホームページを制作を手がける長女の3人暮らし。

目次

大自然から得たもの。そして都会へ…

 青い空、満天の星空、緑の山々、流れる川、私が生まれ育った黒松内は空気の綺麗な自然豊かな町でした。黒松内より更にひと山、奥に入った「中の川」が私の故郷です。バイクで子グマをはねたとか山菜採りに行って襲われたとか、とかくクマ話には事欠かない超ド田舎でしたが、どんな名画よりも美しい自然がありました。春は小川でカエルやイモリが卵を産み、野原いっぱいにタンポポの花が咲きました。夏の夜は、ヤツメウナギが産卵のため一つの穴に何十匹もがうごめき、秋になると山の木の実がたわわに実り、冬は山スキーに明け暮れる。春夏秋冬、朝から晩まで、兄弟4人はとにかく野山を駆け回り、自然の中で遊んで過ごしました。サイロでトウモロコシ踏みをしたり、カラサオで豆の莢(さや)むきをするなどの仕事も、遊びの一部でした。

 そんな田舎暮らしを満喫していた私に、突然、転校話が降って沸いたのは中学3年の春のこと。私は叔母と共に千葉県の柏市に住むことになりました。ド田舎から都会へ、複式クラスからマンモス校へ。たくさんの人に慣れることから学校生活は始まりました。教科書も学習進度も全く違う戸惑いの中、転校の翌日に行われた数学のテストは9点、そして一週間後の中間テストは学年ビリから3番目。廊下に張り出された結果に愕然となるとなる最悪のスタートでした。焦りと戸惑いは高校受験の日まで続き、合格発表の日、合否を見に行った先生が受験番号を見落とし、私に不合格を通知するというおまけ付きで幕を閉じました。「人生で最も辛かった1年間は?」と聞かれたら、私は迷いなく中学3年の時と答えるでしょう。何もできなかった一年間でしたが、13年間の田舎暮らしが良かったのか、何があっても結構元気で、「私には明るい未来ある」と勝手に思っていたかなりの能天気人間でした。努力と根性とは無縁の中学校生活。でも、今の私の原点はそこにあった、と今は思えます。

希望の種

 東京での商社勤務、出産を経て、子ども2人と共に札幌に転居しました。中学に入学した息子が「学校って何じゃ?」と違和感を感じる中、「新しい学校作り」の文字を新聞の片隅に見つけ、訪ねたのが、当時、北24条にあった「札幌自由が丘学園」でした。そこで手がけた自由が丘支援ライブや演劇製作が「何かを作る」を学んだ始まりでした。数年後に開設したフリースクールで私は表現科を受け持ち、子どもたちとの関わりがスタートしました。子どもたちに最高の笑顔を ―これが私の思いでした。最初の計画はオリジナルテープ作りと年に一回のライブでした。生徒みんなが書いた黒板いっぱいの詩は、10ヵ月後に、オリジナル曲「なかまたちの歌」となりました。みんなでスタジオに入り録音したところ、歌も演奏もとても下手でしたが大きな達成感がありました。そしてこの歌は、子どもたちのライブで必ずエンディングとして歌われました。

子どもたちと音楽活動を楽しむ (筆者は左、2006年撮影) 

 1996年12月、私は約3年間お世話になった自由が丘を去り、札幌VO を設立しました。自由が丘での目標は「自分の名前を言える人間になろう」でしたが、VO はそこから更に発展し「責任を持って生きる人間になろう」をテーマに掲げました。社会において「必要である人間」を意識しました。教員資格者1人、情報処理技術者1人、そして私、とスタッフ3人のスタートでした。廃屋の修理とペンキ塗りから始まったVO は、たびたび起こる雨漏りにもめげず、日々楽器の音が鳴り響く、とても賑やかな場所となりました。翌年、NHK 青春メッセージの北海道代表となりました。オリジナルテープを毎年製作し、みんなで販売しました。呼ばれたライブは全部行きました。ライブ会場は、河川敷や公園、農園、福祉施設、学校、病院、ホテル、倉庫などバラエティ豊か。様々なアクシデントにもめげずに歌いました。
ビルの老朽化が進み、3年後に現在の場所に引っ越し、NPO 法人格を取得。「精神的・社会的自立」を一番に掲げ、働くプログラムを導入するなど、VO は新しいスタートを切りました。様々な企業や地域の方の協力を得ることができました。中でも、本郷通商店街のYOSAKOI警備の仕事は、青年たちの楽しみの一つとなっています。また「音楽でのまちおこし」も掲げ、地域のイベント参加や道南フリースクール巡り、中標津児童館巡りなど、地方ライブも数年間行いました。全ては自立を掲げたプログラムでした。そして昨年9月、青年たちの実習施設も兼ねたコミュニティカフェ「SAPA」をオープン。同時に、青年たちは地域興し新聞「ボ・ランチ」の発行を始め、現在菊水銀座商店街記録誌作りにも取り組んでいます。

NPO法人札幌VO
札幌市白石区菊水4条1丁目4-15
sugimori1996@gmail.com
TEL・FAX:011-821-6063 ホームページ http://npo-vo.net/

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次