平田 眞弓(ひらたまゆみ)
NPO 法人楽しいモグラクラブ理事長
2001年、不登校やひきこもり、障がいがある方、悩んでいる人が生き方を探す場所として喫茶店「楽しいモグラクラブ」を開店。2004年にNPO 法人格を取得。年代や分野を問わずに幅広い活動を展開し、現在はホームページ制作のほかパソコン教室、パソコンリサイクルなどを手がける。
発達障がいの私
私は小さい時から変わった子でした。ほかの人ができることができませんでした。今でもできないことだらけです。それは、私がADHD(注意欠陥・多動性障害)脳やディスレクシア(学習障がいの一種)脳だけではなく、相手の気持ちが分からないPDD(自閉症)脳でもあったからです。障がいに気づくことなく過ごしてきた社会生活では、「米が炊けていない」と感じてガス炊飯器のスイッチを押したところガス爆発を起こしたり、車に引かれそうになるなど、痛い思いをいっぱいしてきました。
「なぜ、ほかの人と同じことができないのだろう」とずっと思っていた私は、子育てが終わった頃に、自分のような人たちが集う喫茶店を開くことを考えました。そして、「楽しいモグラクラブ」を開店したのです。持ち前の笑顔とおしゃべりで楽しく喫茶店を経営する中で、専門家との出会いを通じて私は自分が発達障がいだと分りました。「そうだったのか」という思いで、私はホッとしました。私に困難がたくさんあったことの意味を知り、自分の生活している中で感じる困難は障がいの特性から生じるもので、工夫することで少しは改善すると分かったからです。
私は音韻情報が入ること、つまり「脳内聴力」が弱いため、とてもあやふやにしか聞えない脳を持っている上に、自閉的であったの学生時代はボーッとした子でした。勉強もできない、今の学校教育に合わない脳をしていましたから。今の発達特別教育は、どんな感じなのでしょう。私は自分のスピードで学んできたので、発達障がいがある子どもたちには、自分のペースで学べる環境であったらいいな、と思っています。そして、楽しいモグラクラブに集まる人たちも、その人のペースで少しずつ前を向いて生きていく力をつけて欲しいと思います。
障がいを知ったおかげで、昔は許せなかった人を、許せるきっかけをもらったと思います。苦しい事はありましたが、その中で、私は穏やかになりました。
楽しいモグラクラブについて
2001年10月に不登校、引きこもり、障がい者、生き方を探している人たちが集まる喫茶店を開店しました。2004年2月にNPO 法人になり、この間にいろいろなサークルができました。「20代の会」「30代の会」は居場所をつくる目的の活動でした。「フリースペースのライナースの毛布」は、若者たちが対人関係の苦手な子どもたちのお姉さん、お兄さんとなり、一緒に週1回遊ぶ会で、2008年に惜しまれながら解散いたしました。
itkai(アイティーカイ)の母体であるIT の好きな人たちのサークルもできました。対人関係の苦手な人たちの仕事場をIT で作ろうと、北海道ビジネスアカデミーに6人が通いました。とても楽しそうに学んでいたのを思いだします。「中間労働」という競争労働の階段上の特性を、仲間と助けあって仕事をしていくやり方です。仕事も切れ間なく入り、有り難いことと感謝しています。ホームページ作製やパソコン教室、パソコンリサイクルなどを手がけ、例えばパソコン教室はその人に合わせた内容を教えるため、とても満足していただいています。発達障がいの人たちの特性に合わせた工夫もしており、今後は、パソコンがそれほどできない人たちでもできる仕事作りも目指しています。私の場合は読字障がいで、一生パソコンが使えないと思っていたのですが、「かな」ボードが私に合っている、と仲間が探してくれたおかげで、メールもできるようになりました。
人は多様です。さまざまな仲間や私に出会うことで、若者は、自分だけが変わっていて悩んでいるわけではないことを少しずつ理解し、生きる力を付けていきます。生きる力は「自主」になっていきます。自主は人が自分で立っていく骨になります。どんなに周りが支援したからといって、骨が育たなければ立てないのです。楽しいモグラクラブは、してもらうことに感謝しながら、「お互い様」の心を育てています。
世の中で働くことになった時、はじめは新人で何も分らないものですが、教えていただくことに対して感謝をすれば、先輩から、「次代に教えてあげたい」と思う心を引き出します。対人の苦手な人たちだからこそ、心に留めておかなければならないことだと思っています。
NPO法人楽しいモグラクラブ
〒001-0019 札幌市北区北19条西3丁目2番33-100号TEL:011-758-3232
営業時間:13:00〜19:00(冬季は18:30まで) 日曜定休
ホームページ http://mog.la/