大熊 久美子(おおくま くみこ)
NPO法人北海道食の自給ネットワーク事務局長
1999年に北海道食の自給ネットワーク(2005年NPO 法人化)を設立し、事務局長として活動。北海道有機農業協同組合理事、北海道食育コーディネーターなども務める。札幌市在住。
始まりはママたちのサークル作りから
食や農の活動に携わって、早いものでもうすぐ20年になります。今では仲間たちと当たり前の様にしている活動ですが、最初の一歩を踏み出したのは、現在は社会人となった娘が2歳の頃のことでした。当時女性は結婚すると専業主婦になることが一般的で、呼び名も「○○さんの奥さん」か「△△ちゃんのお母さん」が普通という時代。日々の子育てに追われ、社会から隔絶され、ご近所という狭い地域で生きている閉塞感を何となく感じていた時でした。同じ思いを持つ近所のママ友達と出会い、二人で小さなサークルを立ち上げたのが始まりです。
それはママたちの学習サークルでした。子育て中の母親も社会問題を勉強しよう、ひとりで子育てをしないで仲間を作ろうと新聞で参加者を募集したところ、驚いたことに札幌市内全域からたくさんの申し込みがあったのです。そこには子連れでも学びたい、親子で友達作りをしたいというママたちの切実な思いがありました。私と友人は町内会館を会場に借り、集まったメンバー全員で会の運営方法を検討し、保育士さんを募集しました。自分たちで集めた会費から謝礼を用意し、会の趣旨を理解し協力してくれるプロに子どもたちの託児をお願いしたいと思ったからです。こうして毎週木曜日、子どもたちは楽しく遊び、母親たちは別室で学習するという、親子ともに通うことを心待ちにするサークルができました。当時私たちが学習したテーマは「食品添加物」から「日米地位協定」まで実にいろいろ。学習方法も自分たちで調べて発表したり、新聞に載った人にアタックして講師をお願いしたりとさまざまでした。僅かな交通費だけで快く来て下さった講師の方々に、私は今も尊敬と感謝の思いをいだいています。私たちは乾いたスポンジが水を吸うようにたくさんのことを学びました。そして仲間と活動する楽しさや自ら行動することで道は開けることなど、現在に繫がる活動の基本もこの時期に学んだように思います。
NPOの活動へ
サークルはその後も元気に活動を続けましたが、子どもたちの成長やそれぞれの家庭の事情などからやがて解散となりました。その頃から私は生活クラブ生協で活動を始めるようになりました。添加物が入っていない食品や石けんが欲しくて加入した生協ですが、そこで行なわれている組合員活動に興味をひかれたからです。そのひとつに食料自給率と農業の問題がありました。
1996年アクセスサッポロを会場に「食料自給率の向上」と「第一次産業の復権」をテーマにしたイベント『生命(いのち)のまつり』が開催されました。実行委員は有機農業や無添加食品の流通をしているポラン広場、らでいしゅぼ〜や、生活クラブ生協など。当時生活クラブ生協で理事をしていた私はまつりの実行委員長を務めることになりました。まつりは3年間行なわれ、この時の実行委員会メンバーが中心になって1999年、「北海道農業の活性化」と「食料自給力の向上」を目指す非営利の市民団体『北海道食の自給ネットワーク』(以下「自給ネット」)が誕生したのです。
最初の活動は生産地体験交流ツアーでした。厚田村(現・石狩市)で有機農業を営む長良幸(ちょうよしゆき)さんの畑へ貸し切りバスで行き、農業体験と交流をするという企画でした。会員だけではなく一般からも参加者を募集したところ、当時はまだ農業ツアーが珍しかったこともあり、たくさんの申し込みがありました。畑で作業しながら生産者と消費者が直接話し合うことで、お互いの距離が一気に縮まるのを感じました。こういった生産地での交流ツアーは現在も、自給ネットにとって欠かせない活動になっています。
NPO法人北海道食の自給ネットワーク
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