全国の死別者様のためのZoom交流会

2010年4月 相馬契太さん〜訪問型フリースクール漂流教室

相馬 契太(そうま けいた)

1971年札幌生まれ、『あしたのジョー』育ち。酒と麻雀とプロレスと打楽器が好きです。漂流教室を始めて8年。これまで何とかなったから、これからも何とかなるでしょう。

目次

おおかた成り行き

 27歳の年に無職になった。しばらくブラブラしてたが金が尽き、教材会社でアルバイトを始めた。教材を買った家へ家庭教師として勉強を教えに行く。そこで学校に行ってない子に会った。学校なんてあんな楽しいところはない。行かないなんてもったいない。どれだけ諭しても聞かない。だったらこっちの考え方に問題があるんだろう。それでいろいろ調べたのが最初で、それまでは「不登校」という言葉も知らなかった。

 その後、「フリースクール」なるものがあることを知った。折よくボランティアを募集してるところがあって入ったはいいが、来てる子の数が少ない。不登校の児童生徒は全国で10万人を超えると聞いた。じゃあ来てない子は何をしてるのか。酒を飲んで語ってるうち勢いづいて、気づいたら新しい団体を立ち上げることになっていた。大事なことは酒とともに決まる。そのとき一緒に飲んでたのが、いま代表をしている山田で、当時は三重で塾講師をしていた。

 それから理念を固めるのに一年かけた。改めて教育を見直すと、子どもも親も教師もみな大変で、あげく解決もその三者でせよと言う。大変さの減らないゆえんで、だから三者の間に立った関係調整を活動の中心に据えた。漂流教室の活動は現在、家庭支援や学校支援も視野に入れたものへ変わりつつある。その下地はここでできていたのだが、もちろん当時は気づかない。訪問型にしたのは単に場所を構える金がなかったから。団体名はこちらから出かけていくとした瞬間に決定。楳図(うめず)かずおさん※と小学館に名称使用許可を請う手紙を書いたのが最初の仕事となった。結局、おおかた成り行きで決まった。

2002年6月に活動開始。しばらく訪問専門で過ごし、2006年にフリースペース「漂着教室」を開設。訪問と居場所の二本立てとした。訪問は主に家から出づらい子や低年齢層に、フリースペースは学校代わりに来る場所、外出訓練の場所として利用されている。現在、両方あわせて50人弱の利用がある。

※ 代表作に『漂流教室』『まことちゃん』などがある漫画家。

子どもは必ず大人になる

 しかし初めての訪問は大失敗だった。漂流教室の特徴は関係そのものに注目することにある。活動の中心であるメンタルフレンドは、一週間に一回一時間を一対一で過ごす(一が五つも並ぶ)。ただでさえ子どもを巡る日常はせわしない。ゆっくりお互いを知り、ゆっくり自分の気持ちを確かめる。そう何度も確認したのに、会話が続かないことに焦り、きっかけをつくろうと無遠慮にその子の持ち物を触って怒りをかった。「もう来ないで欲しいそうです」―そう電話口で言われた。情けなかった。

 理屈は本でも学べる。だが実践が足りない。それで特訓をした。一人で飲みに行き、隣に座った人に話しかける。打ち解けやすい話題は何か、どう聞けば相手が話しやすいか、ひたすら試した。また、ほかの人をよく観察した。人を緊張させない表情、口調、物腰を洗い出し、真似した。余裕をもって子どもに向きあえるよう、日々研究した。

 そしてそこそこ自信がついたころ、また大きな失敗をした。訪問してたくさん話を聞いて、うまくいったつもりが、夜になって怒りのメールが来た。子どもは何を話しても話さなくてもいい。「話す自由」があれば「話さない自由」もある。聞く側は常にそのことを意識してなくてはならない。それが、なまじ自信を持ったばかりに、うまく聞くことのみに集中し、制御を忘れた。話したくないことまで引っ張り出して気づかなかった。

 どちらの失敗も、子どもより自分の都合を優先したことから起きた。最初は焦りから不用意に相手に踏み込み、次は話を聞くことばかり考えて子どもの意志を無視した。自分と他人をしっかり分けることが相手を尊重するには必要だと痛感した。幸いどちらも他の機関と繫がりがあり、失敗後のフォローをしてもらった。連携の大事さも身にしみて知った。

 子どもは必ず大人になる。ただし、かかる時間は人によって違う。だから漂流教室の利用には年限がない。さほど苦労せず大人になる子もいれば、あちこちつまずきながら進む子もいる。つまずいて、自力で立ち上がることもあれば、他人の手助けが欲しいときもある。そのとき近くに誰かいれば楽だろう。成長する力はそれぞれが持っている。あとは個々に、必要な時間と話し相手を保証する。漂流教室の役割はその辺りにあると思っている。

 大人だっていろいろ迷う。ましてや子どもをや。迷う時間も選べる手助けも、もっとたくさんあっていい。立ち上げまでの話が長く、フリースペースについて詳しく触れられなかったが、これはこれで、訪問とは別の楽しさと悩みがある。そのほか、今後の活動や、「フリー
スクール=不登校」ではないことなど、書きたいことはたくさんあるが、残念、紙幅が尽きた。これ以上は、設立時より毎日更新しているブログでご覧いただきたい。

(漂流日誌→http://d.hatena.ne.jp/hyouryu/)

※漫画の説明:寝てる方が私。毎週発行の通信に載せた水木しげるの模写から

ボランティア募集中

1) 不登校の子の家を訪問して、話し相手や遊び相手になってくれる人
2) フリースペース「漂着教室」で子どもの相手をしてくれる人
どちらも年齢は20代まで 。訪問は継続性が求められるので、最低1年間は活動できる方にお願いします。事前研修有り。月例のミーティング有り。

訪問型フリースクール漂流教室
メール hyouryu@utopia.ocn.ne.jp
TEL・FAX:050-3544-6448
〒064-0808 札幌市中央区南8条西2丁目
ホームページ http://hyouryu.com/

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