朝日新聞出版AERAアエラ(2024年12月23日号)で紹介されました。

2010年9月 澤知里さん〜NPO法人葬送を考える市民の会 代表理事

澤 知里(さわ ちさと)

NPO法人葬送を考える市民の会 代表理事

1956年旭川生まれ。2004年より現職。自分の年齢を間違って覚えるのが得意。32歳を3年間、37歳を2年間やり、今も「52歳」と言って2年目になることに気がついた…。
会のブログ http://blog.canpan.info/soso/

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初めは葬送に関する疑問から

 1995年、母方の祖父が亡くなりました。葬儀は一人娘の母が喪主となり私と妹が手助けしたのですが、亡くなった直後から、寺や親戚、葬儀社への連絡に始まり、仮通夜、通夜、告別式と続いた4日間は、とても慌しく、遺族となった私たちは冷静さを失い、正直に言えばきちんと悲しむ時間のないままあっけなく終わってしまいました。家族を亡くしたことの悲しみに加え、長女として母を支え葬儀を行わなくてはならないというプレッシャー、慣れないことを行う不安、徹夜続きの疲れも加わり、まともな精神状態ではありませんでした。葬儀が終わりしばらくして、今後、もし家族が亡くなった時、あるいは私が死んだ場合、私や家族は何をどうしたらよいのか、きちんと対応できるのかと考え込んでしまいました。あまりにもわからないことが多く、判断に迷うことがたくさんあると感じたからです。

そんな時、知人から「今行われている葬儀に関しては分らないことが多いから勉強会をしよう、という声があるんだけれど、仲間に入らない?」と誘われたのです。葬送に関して疑問を感じていたのは私だけではありませんでした。そして1997年3月に10人程集まってできたのが「葬送を考える市民の会」でした。葬儀社の関係者や宗教者を講師に学習していくうちに、「必ずしなくてはいけないこと」はごくわずかで、ほとんどが自由にできることや、宗教に準じて行われている、と思っていたことが実はそうではなく、マニュアル本や迷信などに振り回されている部分が多いことが分ってきました。正しい情報を得て納得のいく送られ方・送り方を考えよう、葬儀社など他人まかせにするのではなく遺族がきちんと関わることが大切であり、本人の意思も大切にしたい、との思いで、会としての活動が始まりました。

 生と死について真剣に考え、自分や家族の旅立ちのあり方について関心のある高齢者などが会員となり、2000年にはNPO法人の認証を受け、活動領域を拡げてきました。現在は、400人近い会員に支えられています。

最期を迎える手助けをしたい

 会には毎日のように、北海道各地から相談や問い合わせの電話があります。行政機関から教えられたというケースも最近は増えています。この数年増加しているのは、お金がないので葬式ができない、お墓が買えないなど「経済的に困窮している方」からの相談と、病気になったら、葬儀や墓は、相続は、といった、将来の不安に関する「一人暮らしの方」からの相談です。費用に関しては、できるだけ負担が軽くなるような形を提案しています。一人暮らしで身内がいない、いても頼めないという方には司法書士・弁護士・公証人・税理士などの専門家と連携をとり、会で行っている電話での安否確認「元気ですコール」への参加、成年後見制度の活用、公正証書遺言の作成などを勧め、最期まで本人の意思を尊重した形をとれるようにサポートしています。

 また、介護、高齢者住宅、終末期医療、遺言、相続に関する税金、成年後見制度、宗教、墓、散骨などのさまざまな講座や見学会、亡くなった時に着る衣装や骨壷を手作りする講習会などを行なっています。そして、自分らしい最期を迎えるためには自分の思いを書きのこすことが重要と考え、『旅立ちノート』(エンディングノート)を作成しました。さらに交流の場として、参加者がリラックスして話のできる「おしゃべりサロン」を月に2回設けています。その時の参加者の関心事が話題になるので、葬儀や墓の話はもちろん、医療、臓器提供や献体、宗教との関わり、死後の世界の考え方など話題は多岐にわたり、時には身内を亡くされた方が体験談を語ったり、不治の病を宣告された方がご自身の話をされることもあります。「死という言葉自体、縁起でもないと嫌う人もいるし、なかなか話しづらい内容だけど、この会では普通に話せることがありがたい。しかも、ここの会はとても明るいからいいね」と、会に来るのを楽しみにしている方も大勢いて、運営する私たちの励みになっています。

 以前、「葬送を考える市民の会が行っていることは、死の準備教育なのですね」と言われました。「死の準備教育」とは上智大学名誉教授のアルフォンス・デーケン神父が提唱していることで、「死を見つめることで、生を最後までどう大切に生き抜くか、自分の生き方を問う」ためのものです。すべての人に必要で、子どもたちにも成長段階に応じて「限りある生」について教え、命の尊さを知ってもらうことが大切だと言われています。15の目標がありますが、その中には「自分自身の死を準備する」「死にまつわるタブーを取り除く」「葬儀の役割について理解を深める」「宗教におけるさまざまな死の解釈を探る」「時間の貴重さを発見する」といった項目があります。本当に私たちの活動そのものだと感じました。

 生まれる時に「助産師」がいるように、最期を迎える時にも「手助け」が必要と私たちは考えています。会でさまざまな情報を提供しサポートを行うことで安心してもらえるよう、今後とも活動を続けていきたいと思います。

会員募集

年会費3,000円。会員には年4回会報をお送りし、葬送に関する情報をお伝えしています。

NPO法人葬送を考える市民の会
メール shimin@soso-npo.com
TEL・FAX:011-261-6698
060-0061 札幌市中央区南1条西9丁目5-1 札幌19Lビル202号
ホームページ http://soso-npo.com
月〜金曜日(祝日休み) 10:00〜17:00

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