朝日新聞出版AERAアエラ(2024年12月23日号)で紹介されました。

2011年5月 金城朝子さん〜NPO法人子どもサポートどろんこクラブ代表

金城 朝子〜(きんじょう ともこ)
NPO法人子どもサポートどろんこクラブ代表

アメリカ占領下、琉球政府時代の沖縄生まれ。小学3年生の時、父の仕事の関係でパスポートを取得し、日本に初上陸。1992年、北海道に憧れて札幌に移住。学生、塾講師、学童保育指導員を経て、2001年にどろんこクラブを設立。

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英国で福祉国家を体感

1989年、バブル経済の絶頂期に英国に留学しました。当時、日本では誰もが「日本の経済成長はとどまることがない」「貯金なんてしても、インフレでお金の価値が下がり、損をする」と考え、贅沢をして浪費していました。私は、派手な生活やお金が全てという価値観に踊らされていることに嫌気が差し、海外で通用する資格を取って、実力主義の外資企業で実のある仕事をしたいと考えて国外に出ました。ロンドンで経済を勉強し、現地の企業に就職が決まりました。でも3年間英国で生活している間に、福祉国家の素晴らしさに感銘し、私の価値観や人生観はすっかり変わっていました。

 「ゆりかごから墓場まで」というのは聞いていましたが、医療と教育が完全に無料で受けられるとは思っていませんでした。一年以上の滞在許可を得れば外国人でも国民と同等の扱いになり、歯の治療も無料でした。大学も職業学校もほとんどが国立で、当時は行きたくなったら何度でも何歳でも無料で入学できました。学校には、本当に必要な人が必要な時に行くのが当たり前で、日本のように学歴のためとか、ただ何となく遊びに来ているような人は見当たりませんでした。経済は低迷していて失業率も高かったのですが、老後が保障されている余裕なのかキリスト教の教義からか、困っている人がいると手を差し伸べる精神が国民に根づいていました。私は「今のままでは日本は駄目だ! 帰国して日本を何とかしなきゃ!」という漠然とした思いを胸に、就職をキャンセルして戻ってきました。

 福祉系の資格を取得するため再び大学に行くことにし、行き先は、広い大地と山、湖に魅せられて何度も訪れていた北海道にしました。ちなみに、留学先を大国である米国ではなく英国にしたのは、ヨーロッパの歴史や文化に興味があったからです。私は祖先の海洋民族のDNA を引き継いでいるためか、子どもの頃に転居が多かった影響か、何の躊躇もなく一人でどこにでも行きます。

子どもは社会の宝

とにかく子どもが子どもらしく、伸び伸び生き生きと育つ社会にしたいと思い、大学では児童福祉と教育を専攻しました。そして養護施設、障がい児通園施設、学童保育、フリースクールなど、子どもに関わるボランティアや非常勤講師をしていくなかで、色々な問題が見えてきました。

学校に行けなくなった子どもたちは、どこも行く所がなく家にいるしかないこと、障がいのある子どもたちは、学校以外で人と関わる時間がほとんどないこと、保育所や学童保育は親が働いてなければ利用できず、児童館は、集団の中に一人でも飛び込んで行けるような子でないと利用するのは難しいこと―そのため、一日のほとんどの時間を母親と二人で過ごしている子どもがたくさんいました。

「子どもは集団の中で育つ」ものです。私は小学校の低学年まで商店街で育ちました。近所の親はほとんど共働きで、子どもたちは毎日外で真っ黒になって集団で遊んでいました。リーダー格は高学年の男の子で、時にはよちよち歩きの弟や妹まで加わって、助けたり助けられたりしながら遊びの中でいろんなことを学びました。そんな集団を持たない子どもたちがたくさんいると知り、子どもが子どもたちの中でたくましく育つ場として、学校に行っていない子も、集団が苦手な子も誰でも参加できる「どろんこクラブ」を作りました。その名の通り、みんなでどろんこになって思いっきり外で遊ぶイメージのクラブです。

マスコミには「障がい児を受け入れるフリースクール」と紹介されました。当時は利用料として一日3,000円いただいていたこともあり、入会する子どもの9割以上が、受け入れ先を切実に求めていた障がい児でした。私一人では何人もの子どもを外に連れ出せないので、学生や社会人、主婦の方々に毎日ボランティアでお手伝いしていただきました。その後、支援費制度が施行され、NPO 法人が児童デイサービスを運営できるようになりました。私たちの活動の一部をそこに位置づけたことで、障がい児の利用負担は軽減され、新規入会者が一気に増えました。現在は3ヶ所の事業所で、登録児童約100人、職員40人、ボランティアさんが年間延べ500人以上で活動しています。

制度上は別でも、どろんこクラブでは障がいのある子も無い子も一緒に遊びます。また、子どもたちは様々な人と出会います。ボランティアさん、いつも行く公園にいる子どもやお母さん、散歩中の方、児童館にいる子どもや職員、その他、スキー場やスケート場など行く先々にいる人たち。そうやってたくさんの人と関わることで、子どもたちは一人ひとりの違いを感じ、受け入れながら育っていく。地域にも子どもを媒介に交流が生まれ、「子どもは社会の宝」という認識が広がっていく。私はそう信じて活動を続けています。

こんなボランティアを募集しています

子どもが好きな方は、平日午後や土曜、学校の春・夏・冬休みなどに、子どもと一緒に公園などで元気に遊んでくれませんか? ご連絡をお待ちしております。
NPO法人子どもサポートどろんこクラブ
メール doronko_club@ivy.ocn.ne.jp
ホームページ http://doronko-club.or.jp/

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