朝日新聞出版AERAアエラ(2024年12月23日号)で紹介されました。

2011年11月 中谷通恵さん〜 NPO法人お助けネット代表

中谷 通恵(なかや みちえ)
NPO法人お助けネット代表

1960年函館生まれ、苫小牧育ち。1990年より白老町在住。現職の他、「子どもとメディア北海道」事務局長。これまでの経験を生かし、講演・執筆活動や、道の公職に励む。家族は夫・長女(22歳)・長男(19歳)で、子どもたちは家を出ていて夫婦2人暮らし。

目次

理想と現実の育児から気づく

 小学校の教員だった私は1年生を担任することが多く、「たった6歳で、子どもによって育ち方がこんなに異なるのか」と驚きました。特に、人が好きという気持ち(=人に対する信頼感)の育まれ方が、子どもによって全く違いました。教員として力のなかった私は、「就学前に親がもっと愛情深く育てていれば、信頼感の身についた子になっていて、学校生活ではいろいろな力を伸ばせるのに」と、心の中で家庭のせいにしていました。母親が子どもと一緒にいるところを見かけると、「もっと笑顔で温かく子どもに接してあげればいいのに」「なんで子どもにイライラをぶつけるの」とあきれていたのです。
その後結婚し、1989年に娘を出産。生後8か月の育児休暇中に夫の転勤が決まったため泣く泣く退職し、白老町で専業主婦となりました。子育ては楽しく、我が子の表情に癒され励まされ、仕事以上にハードな子育ての毎日も充実感がありました。

 ところが寝不足が続いたり、寒い季節で外に出られなかったりすると、時にはイライラしました。夫にそれをぶつけられる時はいいのですが、できない時は娘にあたってしまい、自己嫌悪におちいりました。「私は母親に向いていないのか。乳児期はできるだけ穏やかに、笑顔でいないとダメなのに」。わずか1年前まで担任として母親を批判していたのに、自分が情けなくなりました。
その時ふと思ったのが、他の母親はどうしているのかということでした。赤ちゃん検診やスーパーで会う母親たちに笑顔があまり見られず孤軍奮闘している感じがしたので、「そうか、子育て中の母親はみんなしんどいんだ」「子育ては、個人の性格やがんばりだけではどうにもならないんだ」と気づきました。母親が孤立している子育て環境を人々に伝えたい..―。私は「赤ちゃん連れでも交流できる場が欲しい」と生まれて初めて新聞に投稿しました。

小石が波紋を描くように

投稿が掲載されると、役場の保健師さんがすぐに電話をくれました。「検診でも中谷さんと同じ意見をよく聞くので、親子で集える機会をつくろうと思います。手伝ってもらえませんか?」。私は天にも昇る気持ちになり、白老町が大好きになりました。行政の人に自分の意見を受け止めてもらい、おまけに行動できるなんて…。さらに子育てや女性の生き方などを本音で語り合いたくなった私は、1993年にミニコミ誌「子育て通信・心の基地になりたくて」の発行を始めました。クチコミやマスコミのおかげで読者は増え、発行した9年間で全道各地千人の母親と交流しました。読者から届く分厚い手紙を読み、「子育て支援は不可欠。どの地域にも網の目のように、支援の仕組みがほしい」「親が乳幼児の心の基地になるには、まず親の心の基地が地域に必要」と強く思うようになりました。
そして、その時々にやりたいことを「この指とまれ」形式で仲間と気軽に取り組みました。子育てや女性の生き方の講演会開催、子育てマップや小冊子作り、楽しいイベントや遊び場づくり。声をかけられれば行政の委員会や懇話会にも親の代弁者として参加しましたが、それでは物足りなくなり、母親たちにアンケートをとって結果をまとめ、仲間と一緒に行政に提言するようにもなりました。1998年には「託児がないと仕事ができない」という若いママの声に突き動かされて、託児グループを結成。手伝ってくれるメンバーを募集すると、子ども好きだという面識のない方々が手を挙げてくれました。2003年には、組織として信頼を得るために主婦11人で知恵を出し合い、冷や汗や本物の汗を流しながら1年がかりで「NPO法人お助けネット」を立ち上げました。個人託児に集団託児、月に数度の子育てひろば、遊びのイベント、親の学習会などに取り組みました。

ところが地域の方々や行政の信頼を得て依頼が増えてくると、嬉しい半面、辛く感じるようになりました。当時は、法人の事務所は我が家(自宅)で、仲間もみんなほぼ無償のボランティアだったのです。そこで、地域に根付いた子育て支援活動として継続発展していくために、拠点を持ち活動費を捻出することを目標に、国の「つどいの広場事業」と「ファミリーサポートセンター事業」を町から受託するため動き出しました。そして両事業を受託したほか、教育委員会の子ども課と協働して1年半後の2007年には「白老町子育てふれあいセンター」の運営を任されるようになりました。
センター運営5年目となる今は、小学生向けの遊び場事業や、400坪の雑木林を生かした外遊びにも力を入れています。スタッフを育成する講習会には、私たちの託児サービスを利用していた母親たちもたくさん受講し、お助けネットにはさらにいろいろな世代が関わるようになりました。地域で子育てを支えるための支援の連鎖ができてきて、とても嬉しいです。これからも、「生まれてきてくれてありがとう!」「ともに育ち合える喜びにありがとう!」とお助けネットの合言葉をかけあいながら、自然体で活動していきます。

NPO法人お助けネット
TEL:0144-82-3926 FAX:0144-82-3927
白老郡白老町日出町3丁目9-17
ブログ: http://blog.canpan.info/otasuke/

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