朝日新聞出版AERAアエラ(2024年12月23日号)で紹介されました。

2012年1月 星川光子さん〜NPO法人いぶりたすけ愛理事長

星川 光子(ほしかわ みつこ)
NPO法人いぶりたすけ愛理事長

1951年美瑛町生まれ。さわやか福祉財団インストラクター、社会福祉士。趣味のバドミントンはしばらくできずにいて、当会のサロンで始めた俳句が新しい趣味? 息子二人は独立し、夫と二人暮らし。今年定年退職した夫は自分で焙煎するほど珈琲好きで、当会のカフェを手伝っている。

目次

福祉は誰かがどこかでするもの?

 大学時代は「婦人問題研究会」に入り、「女性も仕事を持たなければ!」などと言っていました。卒業後は神奈川県警の婦人補導員(※)として、川崎市の青少年センターで非行少年の相談にのる仕事を4年間していました。でも結婚して子どもができるとあっさり退職し、夫の転勤で移り住んだ江差町で子育てを楽しみました。登別に移り住んでからはバドミントンのママさんサークルに入会し、家事はほどほどに毎週2、3日練習に励み、日曜日は試合に出ていました。

 「主婦ってなんて楽しいのだろう!」と趣味と子育てに明け暮れていた私は、ある日バドミントンの先輩に誘われて社会福祉協議会(社協)主催のボランティア体験活動に参加し、特別養護老人ホームで高齢者の衣服着脱や食事介助を手伝いました。高齢の方々とお友達になり、楽しいボランティアでした。でも自宅で寝たきりの方が入浴のためにいらしていましたが、入浴は月に1回だというのです。以前からここでボランティアをしている方に私が「ひと月に1回なんておかしくないですか?」と聞くと、「1回でも入れるだけいいんじゃないの」と言われ、さらにショックを受けました。「自分が親の介護をする時、自分が介護をされる時、それでは困る」と福祉行政に怒りが込み上げ、一方で、社会に無関心で「誰かがどこかで福祉をしてくれている」と考える私のような市民が今の福祉を作ったのではないかと反省しました。何かできることをしようと「さわやか福祉財団」のリーダー研修を受講し、全国各地の市民活動家やこれから始めようとする仲間に出会って刺激を受けたことも後押しし、私は介護や育児の市民互助団体発足を決意。ボランティアをしたことのない主婦の友人たちに声をかけたり、羽田澄子監督の「安心して老いるために」の映画会を開催したりして仲間を35人集め、1995年に「いぶりたすけ愛」の前身となる会をスタートしました。

※現少年補導員。少年非行・被害防止、健全育成活動を進めるため、各警察署長から委嘱されて活動する。

幸せを追いかけ続けて

 子育て中の私たちにお金はなくゼロからの出発でしたから、先行する他団体を真似てチケット制を取り入れ、それを先に販売することでやりくりしました。提供するサービスは、「丁寧にやることで口コミが広がる」という先輩のアドバイスを信じて実践しました。会にはもらったものと拾ったものしかないのが自慢で、ゴミステーションから書類入れも拾ってきました(いまだに使っています)。

 発足時に「良いことをするのだから市にも協力してもらうべき」というメンバーの一言で、社協の中に机を一つ借りて事務所にしていました。一年間は家賃や電話代など全て無料だったので50万円貯まりました。でも当会は市民が主体的に助け合う会なのに、社協に居候(いそうろう)していては市の下請けと誤解されます。社協に居るのは楽でしたがマイナスのほうが大きいと考え、「事務所をどこかに借りるべきでないか」と話し合いました。あの時の会議が、これまでで一番もめ、かつ印象深いものでした。年配の仲間は「自立する資金はない。このまま机を借りるべき」と強く主張しました。喧々々(けんけんがくがく)の末、最後に私が机をたたき、「できるかできないかではない。やらなければならないんです」と言って決着しました。私の恐ろしい形相に誰も反論できなかったようです。

 在宅サービスから始まった当会は介護保険事業、サロン、配食、高齢者生き活きグループリビング(※)「たすけ愛の家」の運営とサービスを広げてきました。そして社会に役立ちたい、地域で働きたいという方が多いことを感じ、高齢者や障がい者の社会的起業を支援する「ともかな(ともに夢を叶えよう)」を2011年5月に開所しました。現在30〜80代の9人の社会起業家が、各自の知識や特技を活かして事業を展開しています。子育てスペースには子育て応援「ともとも」が多世代の心強い子育て応援団として子ども向けの楽しい行事を開いています。物づくりスペースでは、手芸作品や手作りパン・お菓子を販売しています。「たすけ愛の家」の入居者がオーナーの駄菓子屋もあり、小学生が集まっています。コミュニティレストラン&カフェではワンディシェフ7人や障がい者就労支援施設のメンバーが日替わりでランチを作っています。

 私たちにできることがこんなにあったという喜びと、もっと何かできるのではないかという希望があります。夢があり、仲間がいるのは幸せなことです。障がいがあっても高齢になっても、独りでは難しいことでも、仲間がいれば助け合えます。これまで「できるときに」「できることを」のボランティアにこだわり、お仕着せ・金儲け・ほどこしではない活動を続けてきました。そんな幸せを追いかけ続ける過程そのものが幸せだったと最近気づきました。これからも「困った人を助ける」などと意気込まず、みんなが幸せになることを考え、みんなでお金と知恵と労力を出し合いながら、成熟した市民社会を目指したいと思います。

※一人暮らしや夫婦ともお年寄りの方など、独立した生活に不安を抱える人たちが一つ屋根の下で助け合って暮らす家。

NPO法人いぶりたすけ愛
TEL:0143−88−2626
登別市桜木町3丁目2−10

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