朝日新聞出版AERAアエラ(2024年12月23日号)で紹介されました。

2012年2月 竹田保さん〜NPO法人ホップ障害者地域生活支援センター代表理事

竹田 保(たけだ たもつ)

NPO法人ホップ障害者地域生活支援センター代表理事 

1960年木古内町生まれ。先天性の疾病のため車いすを利用する。札幌市立山の手養護学校高等部卒業。88年に当会設立。障がい者支援施設などを5つ運営する「社会福祉法人HOP」と、福祉用具販売等を行う「株式会社北海道オフィスプロダクツ」の代表も務める。

目次

何のために働くか

 私は先天性の疾病により徐々に筋肉の力が衰えて行く進行性筋疾患を発症し、車いすを使用しています。実家近辺には障がい者が働ける場所はなく、行き場のない息苦しさを避けるように私は故郷を出て、札幌市内の会社に就職しました。会社から少し離れたアパートを借り、天気が良い日は電動車いす、天候や体調が優れない日はタクシーを利用して通勤しました。運転手の方が移乗介助で腰を痛めたため、「他のタクシー会社を利用して」と言われ、通勤に四苦八苦した時期もありました。

 幼い時は国立八雲病院に入院していました。私の疾病では寿命は20歳くらいと言われていたため、病院で患者が亡くなるたびに「自分もあと何年かでこうなるんだ」と余命を意識しました。その頃から「明日という日が来ないこともある。明日やりたいことは、今日のうちにやってしまおう」と開き直り、「長く」生きるだけでなく「何をして」生きるかが重要と考え、一日一日を大切に過ごすようになりました。

車いすやストレッチャーのまま目的地まで送迎 高等部卒業と同時に病院を退院しましたが、当時障がい者は大学受験も断られる時代で、合格した公務員試験も自宅待機となり、実家での生活を断念し授産訓練を経て、22歳の時にソフト開発エンジニアとして就職しました。障がい者用のトイレはなく、10時間も尿意を我慢し腹痛を起こしながら、仕事だけは終わらせようとしたこともあります。「障がいを持っているからできない。トイレがない会社では仕事ができない」ということは通用しません。下痢などして迷惑をかければ、二度と働けないと覚悟していました。

 また一人暮らしをしていた自宅で、財布の中のお金を見つめながら、空腹に耐えたことがあります。一人で外出できない私は、お金はあっても食べ物を買いに行くことができなかったからです。「財布の中のお金に価値はあるのか? 給料のためではなく、自分のやりたいこと、自由に生きることのために働きたい」と考えるようになりました。

私的ニーズに応えて、公的サービスを生む

仕事を続けるうえで突き当たる課題は多く、個人では解決できないため、障がいのある仲間たちと作業所を開設することになりました。開所すぐは仕事はなく、電気代の支払いにも事欠く状態でしたが、「居場所ができた。自分の能力を仕事で表現したい」という強い思いが私たちにはありました。お金に縛られない仕事観・幸福感を大切にする意識は今も続いています。

 以前は、働く障がい者はごく一部のエリートという誤解があり、働く障がい者を公的に支援するのは間違っていると思われていました。でも障がい者が働くには、通勤や職場、自宅での介助が必要で、就労場所の存在だけでは不十分です。88年当時、ホームヘルパーの派遣は週2日、日中の約2時間のみしか認められませんでした。そのため私たちは「自分たちの仲間である重度障がい者の就労を支援する」という発想から、移送サービスや介助者の派遣を行うようになりました。自分たちが仕事をする過程で発生した諸々の課題を解決するためにサービスを創り、実践したことが、多くの障がい者や高齢者の役に立ちました。関連する社会福祉法人が運営するものも含め、現在は6ヶ所の職場の他、移送サービス、障がい児の外出支援、障がい者のグループホームなどを提供しています。つまり自分たちの私的ニーズに応えて、公的サービスを生みだしたのです。採算を考えていたら、ほとんどの事業は存在しなかったでしょう。「顕在化していない・期待されていないことに注目して、価値を見出す」が私たちの活動の支柱です。

通所作業所の1泊旅行で網走刑務所に 2011年3月11日の東日本大震災では、被災障がい者に思いをはせ、15日から週に1回のペースで職員を派遣しています。災害移動支援ボランティア「Rera(レラ)」を5月に立ち上げ、宮城県石巻市を中心に、移動困難な被災障がい者の通院、入浴、買い物などを日々サポートしています。私自身、被災地を10回以上訪ねました。被災地では誰もが我慢を強いられる中、障がい者や高齢者が声を上げにくい雰囲気がありました。一方、私たちの活動がマスコミに報道されたことで多くのボランティアが全国から駆け付けたため、無償活動を現在も続けることができています。リピーターとして繰り返し活動に参加する方も多く、また最近では被災者の方が運転ボランティアとして参加する方も多く、また最近では被災者の方が運転ボランティアとして参加されるようになり、地域の福祉サービスの底支えにも一定の効果を果たしています。改めて、被災された方々にお見舞い申し上げます。

 気付いた問題を解決するにはお金が必要なので、事業を行って利益を生みだし、それを新たな問題解決に投資しました。開設当時はNPO(非営利活動)という言葉を誰も知らない時でしたが、利益を事業に再投資することが求められるNPO 活動を私たちはすでに行っていたようです。これからも、お金の一面的な価値に縛られず、働く意義を大切に活動を続けたいと思います。

ボランティア募集

障がい者の通勤・通学・外出介助、レクレーションの手伝いなどをしていただけませんか。交通費実費をお支払いします。また、石巻市で運転ボランティアを1週間以上してくださる方を募集しています(札幌から石巻市までの交通費・宿泊先あり)。詳細はお問い合わせください。

NPO法人ホップ障害者地域生活支援センター
メール aas49970@par.odn.ne.jp
TEL:011-748-6220 FAX:011-748-6221
ホームページ https://www.npo-hop.org/
札幌市東区北14条東14丁目2-5 光星ビル 

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