朝日新聞出版AERAアエラ(2024年12月23日号)で紹介されました。

2012年4月 白鳥健志さん〜NPO法人えべつ協働ねっとわーく理事長

白鳥 健志(しらとり たけし)
NPO法人えべつ協働ねっとわーく理事長

1949年歌志内市生まれ。1972年札幌市職員となる。市役所勤務時代から、プライベートで札幌や江別で「まちづくり活動」を実践。2009年に定年退職し、現在は札幌駅前通まちづくり会社取締役総務部長。

目次

心を優先したまちをつくりたい

 学生時代から「都市計画」をやりたくて札幌市役所に入り、再開発やまちづくりの計画立案・事業支援に携わりました。仕事に就いた当時は、高度成長時代。経済や効率性が最も必要と言われ、再開発事業は安心安全な都市を創る手法として、その公共性を前面に出しながら「善」として活用されました。しかし結果的には経済性が優先されることが多く、まさにモノ・カネ事業の尖兵(せんぺい)として社会を蹂躙(じゅうりん)することもあり、その事業に手を貸してきた私はある意味「悪い人」でした。「生涯、ここに住み続けたい」「商売をやっていたい」という方々に、街の効率性や利便性といった大儀名分(再開発事業)を理由に移っていただきました。そうした人たちに恩恵を提供できるはずでした。でも結局、これまで経験したことのない経済・流通システムに対応しきれず、彼らが小さな店をたたむケースに立て続けに遭遇しました。

 それ以来、政策と住民の関係を考えるようになりました。声の小さい人を押しやって、行政がまちを改造する。これでいいのか? 住民の気持ちは? 大切なのは道路や建物といったカネで作るモノより、そこに暮らす人たちの心では?「心を優先したまちをつくりたい」―そう思ったのは、1995年、46歳の時でした。

サタデーのっぽで商店街に出店

 しかし、住民の声をまちづくりにどう反映させればいいか分かりません。そんな矢先に出会ったのが、リサイクルアートの制作集団である「ゴミ造形団」でした。造形作家の松本純一氏を中心に、ゴミを素材としたアートを自由に楽しく、時に人の求めに応じて制作する若者の集まりでした。私は活動に加わり、いろいろな場所でご当地のみなさんと一緒に制作活動を行いました。今風に言うと「市民参加型アートのまちづくり」でしょうか。アートには、関わる人の心を一つにまとめる不思議な効果があります。私はそれを、住民主体で行うまちづくりの「きっかけ」に使えないか考え始めました。

プロセスである「まちづくり」を楽しむ

 2000年、江別市で「ゴミ達のメッセージ展」を行いました。野幌商店街の各所にアート作品を置き、環境問題の象徴「ゴミ」と、若者による「アート」、活性化が求められる「商店街」の三要素が相まって反響を呼びました。商店街の人とアート制作をするのは、ある意味私が求めていた姿でした。終了後、野幌商店街理事長から「まちづくりを手伝って」と声がかかりました。野幌商店街は、鉄道高架事業に連動された道路拡幅が予定されており、建物の立ち退きなどが想定されます。商店街として将来のまちを考えることが急務でした。私の再開発の知識を活かしたい理事長の意向は、住民主体のまちづくりを行いたい私には絶好の機会でした。

 私は、まちづくりに興味のある仲間と集団「まちづくりACE」をつくりました。ACEは「アートコミュニティエデュケート(アートでコミュニケーションを育てよう)」です(英語にはなっていませんが)。各種イベントを行うほか、市と商店街を説き伏せて費用を折半していただき、誰もが気軽に訪れる拠点「ほっとワールド?のっぽ”」を野幌商店街の空店舗に開きました。

 運営の課題は人でした。当時ACEのメンバーは5人でみんな職があり、平日にのっぽにいられる人がいませんでした。拠点に世話役は欠かせません。アメリカ人留学生を私費で雇ってお願いしたこともありましたが、うまくいきませんでした。

 そんな矢先、現われたのが19歳の「変わった」学生。どこか抜けつつ人と親しくなるのに超人的な才能を持つ彼が、日中も「のっぽ」にいて世話役を務めてくれるようになり、状況は一変。のっぽは格段に明るくなり、多くの人が出入りするようになりました。面白いものですね。人が集まれば、それが人を呼ぶ。いろいろな知恵がでて、活動も面白くなる。面白い活動には、人がまた集まる。好循環です。私はこの期を逃すまいと、まちづくりの伝道師、延藤安弘さん(当時、千葉大学教授)をお呼びして、みんなと一緒にまちづくりの勉強をしました。その結果いろいろな活動がのっぽで育ちました。毎週土曜日に子どもたちを集め、遊びやまち探検などをする「サタデーのっぽ」。おしゃべりしながら着物リメイクなどをする「縁側サミット」。野幌の郷土の歴史を、当時を知るお年寄りが語る動画のネット配信「ノッポロを聞く月曜の宵」、今は無いまちの食堂の味を再現する「月一迷店」。ユニークな活動が、ぞくぞく創り出されました。

廃材のモザイクで作った看板。現在も使われている。

 そのような中、2004年に転機が訪れました。市民活動を促進する拠点をつくろうとの動きです。そこで2006年に「NPO えべつ協働ねっとわーく」を設立し、市民活動の中間支援センターである「江別市民活動センター・あい」の運営を始めました。なお、私の本業(?)の「札幌駅前通まちづくり会社」では、札幌駅と大通をつなぐ「札幌駅前地下歩行空間の地下広場」の活用・管理をしています。地下広場では販売・展示ができ、一日の歩行者は6万人を超えていますので、市民活動の啓発や商品販売を希望される方はご連絡ください。

 私にとって「まちづくり」はプロセスで、終わりのあるものではありません。退職したら24時間「市民活動」に浸り、いろいろな市民活動の方たちとお話をし、お手伝いしたいと思っています。

NPO法人えべつ協働ねっとわーく
メール info@center-i.jp TEL:011-374-1460 FAX:011-374-1461
江別市野幌町30番地1
https://center-i.jp/

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