朝日新聞出版AERAアエラ(2024年12月23日号)で紹介されました。

2012年7月 片桐英理子さん〜NPO法人ニュートリ・ケア 代表

片桐 英理子(かたぎり えりこ)
NPO法人ニュートリ・ケア 代表 片桐 英理子(かたぎり えりこ)
1950年夕張生まれ。栄養士として病院に勤務したり、調理学校の教員を務める。1996年から1年間は専業主婦。1998年に現団体を立ち上げ、現在は札幌市の委託業者として、様々な病気に応じた手作り弁当の配食サービスを行う。

目次

栄養管理の行き届いた食事を提供したい

 子どもの頃の私は活発で、学校から帰ると夕方まで友達の家で遊んでいました。母は病気がちで、私は家の手伝いもしっかりさせられたかな?運動会でお弁当を作ってもらったことはなく、お腹を空かせて家に帰ってから食べていました。中学生の時、夕張から幌内(現三笠市)に転校し、地元の高校に進み(図書局員)、短大に進学しました。子供の頃は、なんとなく淋しかったなというのが思い出です。

 社会人になってからは、栄養士として25年間病院に勤務し、糖尿病、高血圧、腎臓病の患者の献立作りや料理に携わりました。入院患者はそれぞれ1か月〜1年ぐらいかけて治療し、なんとか体調を回復して退院していきます。その度に私たちは「がんばってね」と送り出しました。でもホッとするのもつかの間、3か月もすれば再入院される方が多いのです。自宅では栄養や塩分などに配慮した料理を作る・作り続けるのは難しく、一般に味付けの濃い「できあい料理」を買うことが多いからでしょうか。「自宅で暮らす方に、栄養管理の行き届いた食事を提供できないだろうか」と私は考えるようになりましたが、私自身、病院の業務委託に伴う職場改変を機に退職し、家庭で自分の趣味を楽しむうちに、そんな思いも忘れかけていました。

 ある日、読売新聞の社説に「東京の主婦がボランティアでお年寄りに弁当の配送を始め、今では国の認可をもらうまでに発展した」とあるのが目に留まりました。私ののんびり専業主婦生活も一年が過ぎ、ちょうど仕事の虫が心の中でざわめきだしていたのかもしれません。「これなら私にもできるのではないか」と思い、東区の社会福祉協議会に、どうしたらそんなことができるか相談に出かけました。そして、様々な病気に対応した弁当の配食活動を始めることを決意しました。

自宅を改造して厨房に

自宅を改造して作った外階段付き厨房

配食活動の中心になるのは厨房です。区民センターなどのを借りるには都度予約が必要で、借りられない時は弁当を作れずお客様に迷惑をかけます。長年プロの栄養士として活動し、教壇にも立っていた私には「自前の厨房を持たない」という選択肢はありませんでした。大工の腕を持つ主人に相談し、自宅の2階で納戸に使っていた部屋を厨房に作り変えてもらいました。多くの人が出入りしやすいように、その部屋に直結する外階段も設置しました。「ボランティア(非営利活動)なのに、そこまでしたの?」とみなさんに驚かれます。この厨房は、主人の理解と協力のたまものであると感謝しています。

 そして1998年、「ニュートリ・ケア」はボランティア団体として栄養士20人、栄養士の卵20人、一般の方約15人で活動を始めました。ニュートリは英語で「栄養」を意味するニュートリションからとり、ケアは「介護」で、合わせて「栄養介護」の意味です。私の病院の経験を生かして命名しました。

 転機となったのは2001年です。それまでは個人からの注文より、札幌市からサービスを受託している病院や介護サービス事業者などから再委託されて弁当を提供するのが中心でした。仲介となるそれらの会社に合わせて月〜金曜日だけ作れば良いのですが、利用者個人の要望も受けて土・日はボランティアで弁当を作り配送していました。でも次第に「毎日弁当がほしい」という声が高まり、社協さんからも「直接、札幌市から受託してはどうか」と言われました。では土日だけの受託にしようかなどと考えたのですが、週末のみの委託はなく、一定数の利用者と法人格が必要と分かりました。「活動はボランティアでいい」と考えていた私の当初イメージにはありませんでしたが、このままではお客様のサービスにきめ細かく対応するのも難しいため、NPO法人格を取得し、2001年より札幌市から直接業務を受託するようになりました。

 受託してからこの10年、営業せず口コミでお客様を増やしてきました。亡くなる方もいて、配送員がご遺体と遭遇するケースが数件、脳溢血で倒れている方を発見して病院に搬送し、ご家族に連絡するケースも数件ありました。一人暮らしのお客様に対しては、異変の早期発見という点でもこうした宅配が必要だと痛感しています。また、一人暮らしの方は淋しいのでしょうね。配送員は顔見知りになるとどうしても話しかけられてしまい、配送が遅れ、他のお客様から苦情の電話を受けることもあります。悲しい現状ですね。

昼食調理を終えて

材料費やガソリン、人件費が年々上がっています。安価にこだわってがんばってきましたが、年間の赤字が多くなり、運営は赤信号です。毎日社員と話し合っていろいろ工夫していますが、良い方法が見つかりません。北区・東区以外からも問い合わせが多く、現在はこの二区以外に対応できないのも悩みの種です。ご自宅に出向いて料理をする「出張サービス」を手掛けたいという夢もあります。これからも、地域の方々と対話をしながら活動を模索していきたいと思います。

配食サービス ニュートリ・ケア
札幌市東区伏古8条2丁目2-4
TEL:011-782-7756(片桐)
FAX:011-782-2578

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