朝日新聞出版AERAアエラ(2024年12月23日号)で紹介されました。

2013年1月 田中敦さん〜NPO法人レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク理事長

田中 敦(たなか あつし)
NPO法人レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク理事長

1965年札幌市生まれ。当会を1999年に任意団体として発足し、2010年3月にNPO 法人化。職能団体の事務局長や大学の非常勤講師、高校でのスクール・ソーシャルワーカーなど公職多数。

目次

不登校、中学浪人を経験して

父の仕事の関係で転校が多く、慣れない環境と生まれつきの内気な性格で私は小学生の頃から通学を渋るようになり、保健室登校もしました。中学校に入学してからは学級内のいじめが加わって、完全に不登校となりました。自室にひきこもる生活で、高校受験はすべて失敗。私塾の中学浪人予備校にお世話になりました。すっかり自信を失ってうつむく私でしたが、そこで知り合った大学院生の先生方の気さくな、そして楽しい学びのおかげで変わり、今日の私があるように思います。人は、取り巻く環境によって大きく変化していきます。人から与えられる影響は、やはり大きいものがあると感じます。

大学を卒業して3年間福祉団体で働きました。しかし子どもや若者支援に未練があって退職し、大学の研究生活に戻りました。そのときたまたま岡山県玉野市で高校中退110番全国ネットワークを組織している真鍋照雄さんと知り合いになり、高校中退者の本人や家族への電話相談活動を1992年にボランティアで始めました。多い時には1日に50件を超える電話相談があり、こうした活動のニーズを認識しました。しかし、活動を続けていくうちに、電話で相談できない人たちがいることが分かりました。他者と関係することが難しいひきこもりの若者などです。そこで、今度は自分が中心となって今のレター・ポスト・フレンド相談ネットワークを1999年に立ち上げました。手紙というチャンネルが必要だと思いました。

活動開始後、利用者からは「『手紙で悩みを聞きます』という言葉を見つけてとても嬉しかったです。電話はかけにくいし、手紙なら思ったことを書けていいと思いました(18歳女子)」「この相談ネットの対象に制限がないのが嬉しかった。20歳以上の不登校ひきこもり等の相談窓口は、まだまだ少ない(大学2年生男子)」「手紙でのやり取りの時間的ゆとりが、時間に追われた疲れた人間にはちょうどいいです(不登校児の親)」などの感想が寄せられています。

ひきこもり者が希望を持って暮らせる社会に

活動としては、ひきこもる当事者や家族向けの会報誌「ひきこもり」を2000年に創刊、隔月1回刊行し、読者からは「分かりやすい」など好評を得てきました。2002年からは、外出が困難なひきこもり者宅に、元気になったひきこもり経験者が定期的に訪問するピア・アウト・リーチ支援事業を開始し、仲間との関係性構築のきっかけづくりとなる取り組みに力を注いできました。2007年には、少しずつ外出が可能となったひきこもり者向けの自助グループ「S ANG O の会」を立ち上げました。S ANG O という名称は35歳以後を意味しています。内閣府の子ども・若者育成支援推進法における「若者」の範疇から外れ支援が手薄になりがちな概ね35前後のひきこもり者層が社会から孤立しないでつながりをももつ貴重な地域の居場所として存在しています。

任意団体10年目の2010年、私たちの団体はNPO 法人となりました。節目の年に法人化しようと決断した背景には、相談してくる方々の高年齢化がありました。ひきこもりの相談をしてくる方は、10代から20代、そして最近は30代以上と年齢が確実に上昇しています。彼らを支える家族も同様に高年齢化し、家族だけでは支えきれない状況が顕在化してきました。孤立無援を予防する有意義な他者とのつながりや、失った自己の自信を取り戻す支援が欠かせませんが、それには彼らが主体的に参画し、幅広く社会参加できる機会と多様な人たちとの経験が必要です。そのために、NPO 法人として活動することが必要不可欠と思いました。

北見で開催したサテライトSANGOの会

NPO 法人格を取得後は、各種助成金事業として「北海道ひきこもり支援ハンドブック作成事業」や「ひきこもり経験者参画型ひきこもり理解啓発セミナー」を開催するほか、地方圏に潜在化するひきこもり者の発見と掘り起こしに努め、孤立予防を図る「サテライトS ANGOの会運営事業」など精力的な社会貢献に取り組んできました。現在はそれをさらに拡充する取り組みとして、「北海道ひきこもり生活支援ガイドブック作成事業」などにひきこもり経験者たち自らが取り組んでいます。当事者と支援者が、自らできることを実践し社会に示していくことが明日への希望をつくります。多様な活動を通して、一人でも多くのひきこもり者が元気となり、希望を持って社会参加する手立てを見出していくことが求められます。

近年、社会では「電子メール」が主流になっていますが、それでも今なお「手紙」相談は無くならず、続いています。手紙には、相手の顔が見えない難しさがある一方で、ワンクッションおいた関係性のもとで、やり取りができる良さがあります。これからも新しい取り組みを続けていく方向ですが、手紙による相談が無くなることはないでしょう。不登校やひきこもり、人間関係に悩んでいる方からのご連絡、そして多くのひきこもり当事者をはじめとするみなさんの参加をお待ちしております。

NPO法人レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク

札幌市中央区北4条西26丁目3-2
メール retapost@kzc.biglobe.ne.jp 携帯:090-3890-7048
ホームページ http://letter-post.com/

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次