朝日新聞出版AERAアエラ(2024年12月23日号)で紹介されました。

2013年3月 平田なぎささん〜ビッグイシューさっぽろ事務局長

平田 なぎさ(ひらた なぎさ)
ビッグイシューさっぽろ事務局長

1961年札幌生まれ。家族は夫と息子二人。結婚前は千歳市役所国際交流係に勤務。趣味は海外ドラマ鑑賞で、好きな番組は「メンタリスト」「クリミナル・マインド」「CSI」など。「反貧困ネット北海道」事務局員。

目次

軽い気持ちで活動していくうちに…

ホームレスや貧困問題関係の活動をしている人なら、誰でも必ずと言っていいほど受ける質問が「どうしてこういう活動をしようと思ったのか?」です。私の場合は、2006〜07年に「ワーキング・プア」や「ネットカフェ難民」など貧困問題を取り上げたテレビ番組を見たショックと、湯浅誠さんの本「貧困襲来」がまさに目からウロコで、知らなかった現代社会の問題に気がついたことだと思います。転勤族の主婦で当時は苫小牧に住んでいたのですが、札幌への転居が決まっていたので、関連の活動をしている団体が札幌にあるかネットで調べたり、札幌のシンポジウムに参加したりしました。たまたま知り合った学生さんから「夜回りに行けないから、ビッグイシューを手伝っている」と聞き、それは私にもちょうどいいと考え、札幌に引っ越してきた2008年の春に「ビッグイシューさっぽろ」のボランティアに加わりました。

雑誌「ビッグイシュー」は1991年にロンドンで生まれ、日本では2003年に日本版が創刊、札幌では2007年に販売が始まりました。販売者になれるのはホームレス状態の方で、300円の雑誌を1冊売るごとに160円が販売者の利益になる仕組みです。少しずつ貯金をして、ホームレスからの脱却を目指します。私は販売者の皆さんに雑誌を卸したり、様子を見に行った売り場で一緒に売ったりしているうちに、当時代表を務めていた北大の中島岳志先生から事務局メンバーへのお誘いがあり、軽い気持ちで引き受けたら、いつのまにか事務局長になっていました(笑)。それから私の時間の使い方はすっかり変わりました。やればやるほど、やらなければならないことが増えていくからです。今は社会問題や貧困問題の本を読むのが精一杯で(いや、実際は追いついていません)、以前は好きだったミステリー小説などを読む時間はなくなりました。しかし今の活動に関わって、多くの尊敬できる人たちを知ることができました。

セーフティーネットとして機能する家庭があるか

事務局に入って知ったホームレス問題の難しさの一つは「販売者の居宅」でした。不動産屋で賃貸契約をしたことがある方は思い出していただきたいのですが、書類に記載すべきほとんどの事柄を彼らは持っていないのです。「現住所」「電話番号」そして一番困るのが「保証人」です。これは、ホームレス状態の本人一人がどう頑張っても無理です。そこで私たちは救護施設の方にアドバイスをいただいたり、協力してくれる不動産屋さんを紹介していただいたりしながら、一方では販売者全員に「まず、携帯電話を買うために貯金しましょう」「いつごろまでにアパートに入るか目標を決めましょう」と持ちかけました。それが実り、2009年のはじめ頃までには当時の販売者は全員アパートに入ることができました。

世間には「ホームレスは働く気がない」「怠けている」と思っている人がたくさんいます。しかしホームレス状態である本人だけの責任ではない場合がほとんどです。私は小学校入学の前年に母子家庭になりました。幼稚園に通うことすら経済的に困難でした。でも私の場合は幸運にも、母子家庭といっても祖母と叔母もいて、家庭が家庭として機能していました。そして20代に「バブルの時代」となり、自分も親も貧困状態から抜け出すことができました。でも今ホームレス状態の方の中には、そもそも生まれた家庭がセーフティーネットの機能を果たしていない場合が非常に多いのです。

地下歩行空間内のビッグイシュー販売ブース

ビッグイシューの優れたところは、単に仕事のない彼らに仕事を提供するだけでなく、販売するために路上に立つことによってお客さんと話をするようになり、それまで失っていた「人とのつながり」を回復できることです。ホームレス状態になってしまう方は、頼れる家族も知り合いもいない孤立した人たちです。そんな彼らも雑誌を手に立っていると、お客さんは雑誌を買うだけでなく、「暑いけど大丈夫?」「ご苦労さま」などと声をかけてくださいます。馴染みになると世間話をすることもあります。それが人とつながる第一歩。彼らに人とつながる心地よさを知ってもらう、思い出してもらうことができます。

皆さんもビッグイシューの販売者を見たら、声をかけてください。それぞれ個性や得意分野があって話があうかもしれませんよ。また、ビッグイシューは雑誌としても優れ、震災後は被災地のレポートを休まず連載し、環境問題、若者の問題、あるいはアートや料理レシピなど役に立つ情報もいっぱいです。

ホームレスの方の自立サポートには様々な困難があり、やったことが必ずしも実を結びません。ボランティアのほうが疲弊してしまうこともあります。でも私の場合は「まぁ、そんなものだ」とあまり気にせず、切り替えがうまくできるのが幸いしているかもしれません。

※ビッグイシューの卸や在庫管理のボランティアをしませんか? (エクセルの簡単な操作が必要)。ご連絡お待ちしています。

ビッグイシューさっぽろ
〒060-0808 札幌市北区北8条西3丁目 札幌エルプラザ2階 札幌市市民活動サポートセンター内 事務ブースNo.10
メール big.issue.sapporo@gmail.com  携帯:080-4040-0914
ホームページ https://bigissue-sapporo.com/

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