朝日新聞出版AERAアエラ(2024年12月23日号)で紹介されました。

常盤野晴子さん〜NPO法人きなはれ代表

常盤野 晴子(ときわの はるこ)
NPO法人きなはれ代表

1964年釧路市生まれ。短大を卒業後、損保会社に勤務。その後、佛教大学社会福祉学部通信課程卒業。1997年、精神障がい者を支援する共同作業所ヨベルで働き始める。2007年、ヨベルを現法人名に改名してNPO法人化。現在、同法人の白石障害者就労センタースカイに勤務。

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価値観を変えたいくつかの出来事

子どもの頃は内弁慶で外ではよく泣いていましたが、友達もいて、ごく普通の子でした。見かけは元気で活発ですが、苦手な体育や家庭科のテストがあると、仮病を使って学校を休んでいました。もう時効ですよね(笑)。できない自分を人に見せたくない、周りの評価を気にする見栄っ張りだったと思います。

短大を卒業し、損保会社に入社しました。ここで、先輩やお客様に社会のマナーや仕事の仕方などを教わりました。当時はバブル期で仕事をたくさんしましたが、飲み会やレクリエーションも多く、先輩や同僚とよく遊び、良い雰囲気の中でのびのび仕事をしました。今の仕事の基礎は、その時に培われたものです。最近、当時の先輩たちと20数年ぶりに度々再会し、良い時代と良い人たちに囲まれていたとつくづく思いました。

当時の私は「福祉」とは無縁でした。そんな私が変わったのは、父の病気がきっかけでした。現在、父は元気で過ごしていますが、私が25歳の頃に病気で倒れ、入院生活を送りました。父は仕事人間で、会社に泊まり込むような生活を送っていて、過労も病気の原因の一つだったと思います。その時、会社や社会というものが、一生懸命頑張ってきた父に冷たく感じました。私は「人を大切にする・人にやさしい=福祉」を漠然と考えるようになりました。

知人がうつ病にかかったりしたのもきっかけとなり、通信で福祉の勉強を始め、卒業のめどがついたところで12年間お世話になった会社を退職しました。某講義で見たビデオの中の「精神障がい者」は、足かせをつけたり、座敷牢(ざしきろう)に座ったりしていました。昔の様子ですが、衝撃を受けました。また、ボランティア先のデイケアで初めて精神障がいのある人たちと出会った時の印象は「優しい普通の人たち」で、カラオケを調子っぱずれに歌うメンバーを楽しそうに見る姿を見て、おおらかさや許容の広さのようなものを感じました。彼らとの小さな出来事の積み重ねが、自分の価値観を少しずつ変えていきました。

活動の中で学び、壁を越えて

そのデイケアの卒業生たちと過ごす毎日が始まると、思い通りにならないことが多く大変でした。彼らは仲間にはおおらかでしたが、それ以外の人には心を開かず、私は一人で空回りしていました。その頃の私は、彼らは「障がい者」でいろいろなことが出来ないから自分が頑張らなければ、と障がいのある人を「自分とは違う人」と思っていました。思い上がった考えです。彼らもそんな私を見抜いていたのだと思います。行き詰まり、どうしようもなくなって、自分の窮状を訴え、助けをお願いし、自身の非力を認めたところで、彼らと共に協力して「ヨベルを創る」ことが始まりました。彼らには力がないと思っていましたが、実は、弱っている人を受け入れて助けたり、勇気づけたりする力があるのだと知りました。そんな紆余曲折を経て15人で立ち上げた「共同作業所ヨベル」に私は再就職しました。

活動して5年たった頃にも、行き詰まりを感じました。地域の方たちにいつも「お願いします」と頭を下げている自分に気づいたからです。障がいのあるメンバーは悪いことをしているわけではなく一生懸命に生きているのに、なぜ周りの人たちに「お願い」しなくてはならないのか、と卑屈になっている自分がいました。その頃、「浦河べてるの家」の向谷地生良(むかいやちいくよし)理事の「地域からどう見られるかではなく、地域をどう見るのか」といった双方向性の視点のお話を聞いて、地域に出ようと決めました。今も商店街の方々と良い出会いがあったり、人々の交流を目的にした「白石まちづくりハウス」で喫茶店の運営に参加したりしながら、自分たちが地域に役立つことを目標に活動を続けています。

「コミュニティ・キッチンふぃーる」の厨房の様子

障害者自立支援法が施行され、障がいのある人たちの様子も変わってきました。就労を意識する活動も取り入れ、2012年、白石障がい者就労センタースカイを立ち上げました。精神障がいや発達障がいのある人がレストランで職業訓練を行っています。どの方も前向きで、自身に向きあいながら過ごしていて、私は「彼らが社会に出て、のびのび仕事ができるようになるのはどうしたらよいか」と考える毎日です。

彼らは、望んで障がい者になったわけではありません。現状の中で、矛盾や迷いや悩みを抱えながら毎日を過ごしている様子から、「コツコツと日々を積み重ねる、人としての生き方」を教わっています。そして、どの職員も気持ちのある魅力的な人たちです。人に恵まれて、今まで仕事をしてこられました。これからも真摯な態度で彼ら接し、一緒に泣いたり笑ったり、平凡な毎日を過ごしていきたいと思います。

レストランの利用者募集

障がいのある方の就労支援訓練の一環で、ランチやスィーツを提供する「コミュニティ・キッチンふぃーる」を営業しています。ぜひ一度食べにいらしてください。また、当店でイベン トや会議等を開催していただくことができます。ご希望の方はご一報ください。

NPO法人きなはれ 白石障がい者就労センター スカイ / コミュニティ・キッチン ふぃーる
札幌市白石区東札幌2条5丁目8-13 2F
TEL:011-820-1551 FAX:011-820-1552
ホームページ http://kinahare.net/

コミュニティ・キッチンふぃーる

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